実行部隊を持たない製薬企業
日経本紙朝刊の「未来面」、8月のテーマは
「20年後、どんな
『延長線上にない変化』が起きる?」
20年後を妄想していい、というお題はなかなか面白いなと思ったので、参加してみることにしました。
私が日頃書いているnoteは現在のサイエンス寄りの話題が多いですが、今回は未来に思いを馳せてみたいと思います。
私の仕事は製薬企業へデータを提供すること。この観点からの妄想なのですが、20年後には、こんな製薬企業が出てきているのではないかと考えました。
実行部隊を持たない製薬企業
と一言で言っても具体例がないと分かりづらいと思うので、最近アストラゼネカ社と提携拡大した第一三共の組織図を実例としてご紹介したいと思います。(組織図の詳細はこちらをご覧ください)
<各ユニットの概要>
コーポレートユニット
『経営戦略ユニット』『DX推進ユニット』『製品戦略ユニット』『事業開発ユニット』『総務ユニット』の5ユニット体制で、CEOのグローバルな戦略立案、推進管理をサポートしています。
機能ユニット
グローバルに戦略を策定し執行していくことができるよう、『研究開発』『バイオロジクス』『製薬技術』『サプライチェーン』『メディカルアフェアーズ』『信頼性保証』『安全管理』の7つの機能をそれぞれユニットとして編成しています。各機能ユニットではグローバルに展開すべき事項を定め、それら事項に関する戦略の立案と執行を指揮し、併せて事業運営効率の向上を図っています。
事業ユニット
日本国内の医薬営業ユニットとグループ会社に加えASCAカンパニー(ASCA=Asia , South & Central America)という社内カンパニー組織を設置しています。
この組織編制の狙いは、以下のように書かれています。
変化の激しい経営環境の中で成長していくために第一三共は、5つのコーポレートユニットと、7つの機能ユニット、事業ユニットからなるグローバル経営体制を設けて、戦略的な意思決定と戦略の実効性を高めています。
で、私が妄想する組織図は、以下のようになります。
メインはコーポレートユニットのみになっているのがお分かりになると思います。
1)事業ユニットは全て外部委託に移行
営業やその他事業部は持たない
2)機能ユニットは基本外部委託に移行
研究、開発、技術に関する専門チームは
コーポレートユニットの中のいずれかに
その機能・人材を移管する
という形で2ユニットをそぎ落としたコーポレートユニットに特化した企業形態となります。
ホールディングス企業とも違う形態です。傘下に実行部隊を持ちません。全て外注してビジネスを回します。
例えば製品開発は、研究開発の段階から外部ソースと連携して動き、承認申請も外部リソースで実施し、企業体としては全体のコーディネートに専念します。
承認後からは、製造部門、マーケティング部門、営業部門といった製造販売に関する部門もアウトソースして動く。
これが持続可能なのか?
というとよく分からないというのが私の率直な答えです。
ただ、ベンチャーキャピタルや投資会社といった立ち位置に製薬企業がシフトしたと考えると戦略特化型の企業形態も可能かもしれません。
これまでの製薬企業においては、どうしても社内アセットに影響を受けるため、戦略も「自分たちにできること」を念頭に置いて考えられてしまいます。
<社内アセットとは?>
わが社は抗体に強みを持つとか、がん領域よりも免疫疾患に強いとか、営業力が他社より優れている、といった自社の強みのこと。
今回私が妄想した「戦略特化型の製薬企業」のメリットは、社内アセットに捉われることなく、自分たちが出来ることだけに縛られることなく、自分たちがやりたいことに集中できるというところにあります。
例えば、
希少疾患だけを標的にしたり、
売上規模だけに焦点を当てたり、
新しいモダリティに絞ったり、と
狙いや目標に応じた柔軟な舵取りが可能になります。
また、これから先の未来ではCEOがAI、なんてこともあるやもしれず、より効率重視な舵取りも可能かもしれません。
ビルの1フロアもあればオフィスは足りますし、製品・疾患単位のプロジェクト活動になるので、疾患領域や技術領域においての専門家をプロジェクトごとにアサインすることが可能にもなります。
少し味気ないのかもしれませんが、経営だけに特化した新しい経営形態としては面白そうかなと。
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