CoVIg-19アライアンスにおけるCOVID-19治療薬候補の高度免疫グロブリン製剤の治験が残念な結果に。。。
この残念なニュースに触れて、結構がっかりしています。もちろんこのプロジェクトに参画している企業、行政、その他関係者の方々も同じ気持ちだと思います。
武田薬品工業は2日、米CSLベーリングなどと開発する新型コロナウイルス感染症の治療薬の臨床試験(治験)について設定した目標を達成できなかったと発表した。回復した患者の血液由来の成分からつくる血液製剤になり、重症化リスクのある患者向けで治療効果が期待されていた。
昨年2020年3月初旬に武田薬品が新型コロナ治療薬開発を表明しました。
武田薬品工業は4日、新型コロナウイルスに対する治療薬を開発すると発表した。新型コロナに対しては米ギリアド・サイエンシズやアッヴィ、富士フイルムの医薬品が有効とされている。武田は血液由来の医薬品開発技術を使って新規治療薬を開発する。人での安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)を早期に始め、最短9カ月程度で実用化することを狙う。
約1年間多くの人が関わり治験が進められてきたものの、ネガティブな臨床試験結果となってしましました。。。
このnoteでは今回の取組みを簡単に振り返りたいと思います。
今回の動きを武田薬品のニュースから見たまとめnote
私は以前、日本製薬という国内の血漿分画製剤を製造販売する製薬企業にいたこともあり、武田薬品を含む世界の製薬企業12社と治療薬を共同開発する特殊免疫グロブリン製剤(hIVIG製剤)についてニュースを2020年5月から追っていました。下記は、ニュースを追跡していたnoteになります。
今回の臨床試験(ITAC)試験の概要
今回の臨床試験は、Inpatient Treatment With Anti-Coronavirus Immunoglobulin (ITAC)試験と名付けられています。今回の発表は、この試験の評価項目を達成しなかったということです。
以下は、ITACの試験情報が記載されているCT.govのリンクになります、ご興味がある方は覗いてみて下さい。
ちなみに、評価項目は「Outcome Measures」という項目として表記されていて、主要評価項目はPrimary Outcome Measures、それ以外の評価項目はSecondary Outcome Measuresとして記載されています。
<主要評価項目>
7. 死亡
6. 終末臓器不全
5. 生命を脅かす終末臓器障害
4. 重篤な終末臓器障害
3. 中等度の終末臓器障害
2. COVID-19により日常の生活動作が制限される症状あり
1. COVID-19により日常の生活動作が制限される症状なし
ついでに書くと、評価項目を以下の組合せ間で比較し、1)の方が2)よりも良い結果であることを示そうとしているのがこの試験の骨子になります。
1)hIVIG製剤(今回の治験薬)+レムデシビル(標準治療として)
2)プラセボ(hIVIGの代わりとして)+レムデシビル(標準治療として)
現在も解析は継続中で、NIAIDおよびINSIGHT Networkは試験の詳細結果を近く発表する予定とのことなので、どのような結果かは暫し待たなくてはいけません。
CoVIg-19アライアンスの取り組みは終了
最後に、武田薬品のプレスリリースをみると、今回の国際的アライアンスは一旦終了するとのことです。
ITAC試験の結果を受けて、CoVIg-19アライアンスの取り組みは終了いたします。世界中の組織が参加したこの1年間の協働の取り組みにより、製薬企業内外の関係を強化し、科学的根拠と必要性に基づいた実用的な規制に向けて新たな視点が得られました。そして、緊急の公衆衛生上のニーズに対処するための今後の協力の機会に向けて、明確に定義され、かつ、法的に準拠した枠組みが提供されました。
この経験は各社における人的な交流が生まれたはずなので、またこのような事態が起きた場合にはこの経験が活きると私も思っています。関係者の皆様色々と本当にお疲れ様でした!
おまけ(血漿分画製剤のはなし)
今回の武田薬品の動きに合わせて書いた血漿分画製剤をまとめたnoteがあるので、血漿分画製剤にご興味が湧いたがいらっしゃれば是非お立ち寄りくださいませ。
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