『中外モデル』の話を読んで改めて考えた私が仕事をする意味の再確認
中外製薬の永山治氏(73)は3月に会長職から退き、名誉会長となった。
スイス製薬大手ロシュの傘下入りを決断し、国内外の製薬大手が効率よく連携する「中外モデル」を築いた永山氏に、提携の意図や今後に期待することなどを聞いた。
という書き出しから始まる中外製薬名誉会長永山治氏の記事は、現在製薬業界を支える仕事をしている私にとって非常に興味深いものでした。
このnoteは、こちらの記事にある私にとっての大切なポイントを自分自身のために整理したものですが、シェアすることによって誰かの役に立つといいな、と思います。
雑談の大切さ
ロシュの傘下に入った経緯について永山氏は次のように述べています。
「ロシュの他に4-5社のトップとの「雑談」を通じて可能性を探り、当時のロシュCEOだったフランツ・フーマー氏と経営観や製薬業界の環境、将来をどうみるかといったことについて、よく議論を交わしていた」
トップ同士がどのような形で雑談をする場を設けているのかといったことも気になりますが、それ以前に、自社がどの企業の傘下に入るか、その大きな決断・交渉への入り口が「雑談」と言うところに深みを感じます。
この雑談の場では会社対会社ということよりもむしろ、個人として「合う・合わない」ということも含めて、色々な言葉にはならない情報のやり取りもかなりしていたのだろうと思います。
これは経営トップだけの話ではなくて、プロジェクト単位の小規模チームにおいても同様に当てはまる真理だと思っています。
そして、いわゆる「中外モデル」が生まれた時の話がいい。結構面白い流れの話なので記載しておきます。
「2000年8月ごろ、一般論を語り合っても仕方ないから、互いにアイデアを出しあおう、となった。私が大事に思う点を箇条書きでフーマー氏に渡し、フーマー氏がそこに付け加える形で提携内容を作成した」
なんだかすごい展開というか。。。交換日記みたいな感じで提携の骨子が決まるとは驚きです。
「日本の経営は日本の企業が経験も厚いという話になり、自主経営の方向性が決まった。医療用医薬品を扱うロシュと中外を一緒にして、経営は中外製薬が担う形になった。これが世に言う『中外モデル』だ。いまだに同じようなものは出てきていない。私とフーマー氏の1対1の発想で出来上がり、他社のひな型にならないためだろう」
同じような提携の形がいままでに現れていない理由を、「私とフーマー氏の1対1の発想で出来上がり、他社のひな型にならないためだろう」と述べています。勝手な印象なのですが、馬が合うという感覚をこの提携の形を模索した経緯に感じずにはいられません。
提携したらどれだけ稼げるかというビジネス面の確認は確実にしているとはいえ、永山氏とフーマー氏の間の個人的なの関係性も活かされた上で中外製薬とロシュの最適運営方法が生み出せたと想像しています。
私に向けてのメッセージのように感じた部分
現在の経営陣に望むこととして、永山氏は以下のように述べています。
「患者さんへのソリューション提供が我々の仕事。これまでは薬を提供してきたが、50年後も新薬が出続けるかは分からない。再生医療などのアプローチも考えられる。研究所で試験管を振る伝統的なやり方を離れ、人工知能(AI)やビッグデータ解析で創薬するのかもしれない。製薬会社として今後、何をすべきか検討してほしい」
ここが、私が本当に興味を惹かれた核心の部分です。
読みながら、私に向けての言葉かと思い、ぐっと心を掴まれました。
患者さんへのソリューション提供が我々の仕事
これは決して忘れてはいけない最も大切なことだと思っています。
私は製薬企業からは離れましたが、現職の製薬企業への情報提供という仕事も患者さんへのソリューション提供に貢献できる、大きな輪の中の一員だと思っています。
私たちが質の高い情報を提供し、適切かつ迅速な意思決定につながれば、それだけ早く患者さんのもとへ医薬品が届くと思って仕事をしています。
「患者さんへソリューション提供」という目的は、製薬企業だけでなく周辺企業も含む医薬品業界全体が目指すべき本質的な目的であると思います。
これまでは薬を提供してきたが、50年後も新薬が出続けるかは分からない。再生医療などのアプローチも考えられる。
これはロシュ本体を見ると分かるのですが、色々な技術開発も含むR&Dへの積極的な投資が物語っています。
(低分子や抗体医薬品などの種類/技術)の研究や私のいる会社への調査・分析依頼なども含まれています。研究開発投資という先行投資により、未来に起こり得る業績低下を埋める努力をしています。
研究開発投資の中には、新しいモダリティ(低分子や抗体医薬品などの種類/技術)の研究や私のいる会社への調査・分析依頼なども含まれています。産業化されるまでの期間が短くなっています。
特に近年は科学的知見の発見から産業化されるまでの期間が短くなっています。常に新しくし続ける必要があります。そのために研究者の多くは学会に参加したり、多くの最新論文から情報を集めたりしています。
そのため、最新の科学技術についての知識を常に新しくし続ける必要があります。そのために研究者の多くは学会に参加したり、多くの最新論文から情報を集めたりしています。データに対してしっかりとしたスタンスを持っています。Information Scienceも自前でやり、ノウハウを蓄積し、論文も出している。こうした科学技術を吸収するための基盤技術への投資もしています。
例えばロシュの話でいうと、データに対してしっかりとしたスタンスを持っています。Information Scienceも自前でやり、ノウハウを蓄積し、論文も出している。こうした科学技術を吸収するための基盤技術への投資もしています。
研究所で試験管を振る伝統的なやり方を離れ、人工知能(AI)やビッグデータ解析で創薬するのかもしれない。
やはり常に新しいものを取り入れて風通しを良くしていくことの必要性を説いていて、AIやビックデータの利用にも言及しています。あくまで「道具/ツール」ですので「これらをどのような課題に対して利用していくのか?」といった問いを立てるのは、未だに人間が担当するクリエーティブな領域だと私は思っています。
しかしながら、AIやビッグデータはあくまで「道具/ツール」ですので「これらをどのような課題に対して利用していくのか?」といった問いを立てるのは、未だに人間が担当するクリエーティブな領域だと私は思っています。新しいテクノロジーを『患者さんへのソリューション提供』のために使い倒せ!」という、社員に対しての檄のように、私には聞こえました。
ましてや製薬業界だけの話でもなく、広く遍く多くの人にとっても傾聴に対する示唆だと思っています。「伝統に捉われずに、新しいテクノロジーを『患者さんへのソリューション提供』のために使い倒せ!」という、社員に対しての檄のように、私には聞こえました。
これは中外製薬だけの話ではなくて、ましてや製薬業界だけの話でもなく、広く遍く多くの人にとっても傾聴に対する示唆だと思っています。
製薬会社として今後、何をすべきか検討してほしい
そして最後に非常に重い内容が書かれています。これは世界中の製薬企業だけでなく、「製薬企業」を「御社」と読み替えるとほぼすべての会社が同じ課題を持っていると思っています。考えるべきことが多くありますが、各企業、各部署、各社員が考えることを止めないようにしなくてはいけないと思っています。
この問いに対しては、考えるべきことが多くありますが、各企業、各部署、各社員が考えることを止めないようにしなくてはいけないと思っています。「患者さんへのソリューション提供」ではありますが、そもそも医薬品の提供だけがソリューションなのか?と考えることによって様々な新規事業が生まれるかもしれません。
ゴールが、「患者さんへのソリューション提供」ではありますが、そもそも医薬品の提供だけがソリューションなのか?と考えることによって様々な新規事業が生まれるかもしれません。そもそも開発とは、そもそも我々の部署とは、という「ちゃぶ台返し」のような再検討というか再定義がたまに必要かもしれません。
そもそも研究とは、そもそも開発とは、そもそも我々の部署とは、という「ちゃぶ台返し」のような再検討というか再定義がたまに必要かもしれません。繋がることである限り、前例などに捉われずに躊躇せず失敗も恐れずに実行して多くの経験・知識を蓄積した企業が本当の意味で今後50年で生き残るための多くのヒントを掴むことになると私は感じています。
患者さんへのソリューション提供に繋がることである限り、前例などに捉われずに躊躇せず失敗も恐れずに実行して多くの経験・知識を蓄積した企業が本当の意味で今後50年で生き残るための多くのヒントを掴むことになると私は感じています。
当てはまることで、色々な経験を積んだ人と言うのは、やはり人間としての厚みと幅があり、色々な場面への対応力も高く、ある意味自在と言えると思います。
またこれは個人にも当てはまることで、色々な経験を積んだ人と言うのは、やはり人間としての厚みと幅があり、色々な場面への対応力も高く、ある意味自在と言えると思います。再び確認することができました。
そしてこの記事を読んで自分が今の仕事をする意味を再び確認することができました。私は仕事がバリバリできてキレッキレの人にもなりたいけれど、人としての幅も深みがある人間にもなりたいと思いました。
そして永山氏の言葉に触れて、私は仕事がバリバリできてキレッキレの人にもなりたいけれど、人としての幅も深みがある人間にもなりたいと思いました。なんか今日もも頑張れそうです!
大いに勇気づけられた記事でした。なんか今日もも頑張れそうです!
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