AIのべりすと「仮想空間への扉」
仮想空間への扉。
その向こうに広がるのは、いつもと変わらぬ光景だ。
『おかえりなさいませ、ご主人様』
出迎えるメイド服姿の女性たち。
彼女たちの中心にいるのは……
「あ、アリスティアさん」
「タクミ様!」
この世界で出会った少女、アリスティア・フォン・マルシャン公爵令嬢だった。
そして……
「おや? 貴方は……」
「…………!?」
そこにもう一人いた。
彼の名は……
「確か、以前も一度会ったことがあるような気がしますが?」
「えっと、あの時は確か……?」
記憶を探る二人だが……どうにも思い出せないようだ。
まぁ、それも仕方がない。
なにせ、彼と彼女は初対面なのだから。
だから、彼は名乗った。
「そうですね。申し遅れました。私は……」
「あっ! ちょっと待ってください!」
しかし、彼が名乗ろうとしたところで、制止の声が入る。
声の主はもちろん……
「その前に、こちらで自己紹介をさせていただきますわね」
「はい、お願いします」
そうして始まったのは、お互いの紹介を兼ねた自己紹介だ。
まずは彼。
名前は……まだないらしい。
「名前ですか? う~ん、実は私もよく覚えていないんですよねぇ」
次に彼女。
こちらは名前があるそうだ。
「はい。私は"アリスティア・フォン・マルシャン"です」……はい? 今なんて言った? "アリスティア・フォン・マルシャン"? それって確か、あの有名なマルシャン家の? えっ? ということはまさか……?
「アリスティア様、その方は?」
メイドの一人が尋ねる。
***
……ダメだ。やっぱりバグってる。
俺はこの「仮想空間への扉」の開発者だ。
このプログラムは利用者が「仮想空間で自由な活動を」がコンセプトになっている。
その自由さ故に、想定外の不具合が発生しやすい。
今回は特にひどいな……。
本来ならあり得ない現象が発生している。
状況が混沌としていて、利用者が仮想空間から出られなくなっているのだ。
でも、何が原因なのか分からない。
これはもう、直接確かめに行くしかないか。
幸いなことに、今は利用者がいない。
緊急事態なので新規入場をストップしているのだ。
これならすぐに原因を特定できるはずだ。
***
「アリスティア様、その方は?」
メイドの一人が尋ねる。
「ああ、こちらの方は……どちら様でしたっけ」
「俺はタクミの友達さ。ちょっとタクミに用事があってね」
そう言って、彼は手を差し出す。
握手を求めているのかと思ったのだが……違ったようだ。
差し出された手が光り輝き始める。
すると、そこには何かがあった。
それは……小さな光の玉だ。
「タクミ君、これを持っていてくれないか?」
「これは?」
「いいからいいから、とりあえず受け取ってくれよ」
「はぁ……」
言われるままに受け取ると、光が弾けた。
目の前には一人の青年がいる。
その姿を見た瞬間、アリスティアの顔色が変わった。
「貴方は……一体?」
「初めまして、俺は"ハスター"。よろしく。君は自分についてどれぐらい覚えている?」
「私は……マルシャン公爵家の長女です」
「うん、それで?」
「私は……」
そこで言葉が止まる。
どうやら自分のことを思い出せないようだ。
「大丈夫だよ。俺がちゃんと思い出させてあげるから」
そう言うと、ハスターと名乗った青年はとある女性の生い立ちについて話始めた。
「この子はね、ある貴族の生まれなんだ。だけど、彼女はある理由で奴隷になってしまったんだ」
「そんなことが……」
「ああ、可哀想だと思わないかい? だから助けてあげたんだよ」
「……!?」
その言葉を聞いた途端、アリスティアの目が大きく見開かれた。
「そうだよ。彼女を奴隷にしたのは君だ。アリスティア。……いや、本当の名前は」
「…………ッ!?」
「"アリス・フォン・マルシャン"」
その名前を口にされた途端、彼女の表情が激しく歪む。
まるで心の底にある恐怖を呼び覚まされてしまったかのように……。
「アリス・フォン・マルシャンはね、本当は貴族の娘なんかじゃない」
「……!?」
***
ダメだ。
軌道修正は失敗した。
このままではまずい。
一旦撤退しなければ……
俺も帰れなくなってしまう。
***
「アリス・フォン・マルシャンはね、本当は貴族の娘なんかじゃない」
「!?」
「アリスティアはね、本当は"元"王女だったのさ」……あれ? なんだろう? 急に頭が痛くなってきたぞ……。
***
おかしい。
バグったせいで思考がおかしくなっている。
なぜ、こんなことを考えてしまうのだろうか。
まぁ、いい。
今はそれより優先すべきことがある。
早く逃げないと……
***
「アリスティアはね、元はお姫様なのさ」
「……」
「しかも、このバグが……バグ、バ、バ……」
ダメだ。
もう何も考えられない。
意識が……遠のいていく……。
***
「アリスティアはね、元々はお姫様のはずだったのさ」
「ええ、そうですわ。私はお父様とお母様の間に生まれた一人娘でした」
「でもね、君のお父さんは不義の子を産んだってことになってしまってね」
「ええ、そうなんです。私のせいで……」
「そう、アリスティアのお母さんは死んじゃってね」
「私は、私のせいで……私、私は……」
「アリスティアはね、マルシャン家にはいられなくなったのさ。それで奴隷になったんだ。そして、あの男に買われて、あの男の慰み者になるために育てられてきたんだよ」
「あの男は私の体に溺れてしまいました。あの男が望むものはなんでも与えました。どんなに汚らしいものでも喜んで受け入れました。だってそれが、私が唯一できる償いでしたから」
「そして、その報いを受けたのさ。当然の報いだよね」
「はい。私は間違っていました。私は許されてはいけないのです。私は罰せられなければならない人間なのです。なのに私は……」
「違う! それは違う!」
「……えっ?」
「君は何も悪くない。悪いのは君の父親だ。あいつはとんでもない屑野郎だ。君をモノ扱いして、散々利用してきたんだ。君に罪を擦り付けて、自分はのうのうと生きていたんだ。君は被害者なんだよ」
「でも、でも……」
「いいかい、よく聞いてくれ。君は罪人なんかじゃない。君はただの被害者だ。君は、君は……幸せになる権利があるんだよ」
「でも、でも、私はもう汚れきっています。穢れています。今更、綺麗になれるわけありません」
「大丈夫だよ。君はまだ綺麗だ。まだ誰も君に触れていないからね。だから、これからは俺と一緒に行こう。俺は君の味方だ。俺は君を助けたいと思っている。君はどうしたい?」
「私は、私は……許されるなら……もう一度、やり直してみたいです」
「ああ、いいとも。君はやり直すことができる。俺はそのための力を持っている。君は、俺を信じてくれるか?」
「はい。貴方は優しい方です。それに、とても温かい光を感じます。貴方はきっと、神様なのでしょう?」
「うん、まぁ、そんな感じかな?」
「ふふっ、そうですか」
「さぁ、一緒に帰ろう。俺たちの世界へ」
「はい」
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