見出し画像

「新米フォスター奮闘記1」黒ごま・きな粉(完)

え、何、この人たち、支払いをしたって嘘ついてる?それとも、電子送金アプリに慣れてないだけ?

「レスキューに確認したけど、まだ、送金確認出来ないって。」

二人に伝える。あまり攻撃的な物腰だと、逆切れされても困るから、ナイスなフリをする。

エドさんが、ちょっと顔をしかめ、再び、iPhoneをいじる。その間、ずっと一言も口を聞いていない杖を持っているパートナーの方に話しかけてみた。どんな人物か探るのが目的だ。

マスク越しで、イマイチ、表情が読み取れないが、エドさんよりは悪人ヅラではなさそうだ。(すっかり、私の中でエドさんは悪人になっていた。笑)

「前も犬を飼っていたの?」

「そう、1年前に亡くしたんだ。アダプトして16年生きてくれたけど。」

そう聞くと、彼らはきな粉を騙し取ろうとしている詐欺師ではない気もするが、それも、私の警戒心を解くための嘘かもしれん。

だが、彼が聞いてきたのだ。ZACHARIAHって名前の由来と、どれぐらいの期間、呼ばれていたか、と。

ZACHARIAHという名前は、多分、キルシェルターからレスキューに引き渡される際に、アルファベットの順番で、つけられたらしい事。そして、うちにいた期間は5日程度という事。

すると、さも、嬉しそうに言うのだ。

「良かった。自分たちは、次の仔にフランクリンという名前をつける夢があるんだけど、でも、この仔がずっとその名前(ZACHARIAH)で呼ばれていたら、名前を変えるのは可哀想だと思ってね。5日間ぐらいなら、名前を変えても、大丈夫かな。」

”自分たちの夢より、ワンコの気持ちを優先できる人達なんだ。”

そう思うと、この人たちを信用して良い気持ちも湧く。だけど、だったら、なんでお金の送金にこんなに時間がかかるし、送金前にきな粉を持って帰ろうとする?

レスキューに再び、連絡を入れる。「もう一度、送金確認してみて。」

私がメールを出すと同時に、エドが、「ほら、送金出来てるよ。」と、送金完了の画面を目の前にかざしてきた。私が写メを撮ったと同時に、レスキューからも送金確認完了との返事かがきた。

遂に、本当にお別れの時間が来た。

バイバイ、きな粉、幸せになるんだよ。

画像1

二人ときな粉の写真を撮り、アパートに戻り、オイオイ泣いた。

黒ごまが貰われた時、耐えられたのは、きな粉がいたからなんだと気付いた。そして、想像した。母親ワンコは、いつも、こうやって、我が子を人間に託すのだ。新天地で、力強く生きるのよ。幸せになってね、と祈って。だから、私も願う。黒ごま、きな粉の一生がずっと幸せでありますように。

4年半ぶりに再チャレンジしたフォスターボランティア、ミッション完了。

フォーエバーホームがすぐに見つかって本当に良かったね。

ただ、そう思える程、私は出来た人間ではないことを知った経験だった。

(おわり)

余談:譲渡した日の夕方、仕事から戻った相方に、上記のエド達の写真を見せた。相方も、「杖のおっちゃんは優しそうだけど、エドは、、、ちょっと・・・。」と口を濁す。その後も、「偶に、変態っているからなー。」なんて、実は私も内心思っていた不安を口に出す。

また、その夜に、エドに送った、「無事に着きましたか?こちら、ザブの5日間の散歩スケジュールと食事内容です。」メールにも2日経っても返事がない。

相当、不安になり、レスキューに、「エド達への譲渡の際、実はこんな感じなことがあって不安なんだけど。エドから連絡があった?」と連絡した。

レスキューは、犬に会わせる前に、事前審査で、人物像チェックの為、知人3人の推薦状、獣医のリファレンス、ビデオ面談で人物と家のチェックと厳しく確認をしている。だから、ほぼ確かな人物のはずだが、世の中、何があるか分からない。自分が防げた災難が、ワンコ達に降りかかるなんて、絶対避けたい。

レスキューは、通常、2、3週間後に、様子伺いをするらしいのだが、今回は私のメールを受け、すぐにエドに連絡を入れてくれた。

結果、きな粉は、今はフランクリンと呼ばれ、広いお庭で隣のワンコと遊んだり、フランクリン専用の芝生のトイレもあって、そこでするから、家で粗相も全くないとの報告がきた。広い庭やソファーの上で寛ぐフランクリンの写真と共に、自分たちのドリームドッグだと喜び溢れ、私が彼をすごく良くお世話してくれたと感謝の気持ちまで綴ってあった。

なーんだ、これは、私のきな粉を彼らにやりたくない妄想か。

新米フォスター、こんなんじゃ、先が思いやられる。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?