スカイとマルコ(11)・信じていいの?
あたしはすっかり大きくなった。
世間では中型犬サイズらしい。お腹ぽっこりのモフモフの子熊体型だったのが、光沢のあるビロードのような黒い毛のスラリとした体型に変化した。でも、真っ青な瞳は変わらずで、シェルターを訪れる一部の人間達から欲せられた。だけど、あたしの性格の悪さはお墨付き。中々、フォーエバーホームは見つからない。あたしはそれで良いと思っている。だって、見かけだけで、あたしを気に入る人間ってどうよ?なんだか、あたしは信用ができない。
「熊子、お前、またやったんだってな。折角、お前を気に入ってくれたのに、お試し散歩で、おとなしくしていたと思ったら、急に引っ張って、引き摺り回した挙句、転ばせ、雌犬なのに、片足あげて、おしっこ引っ掛けようとしたらしいじゃないか。」
午後出勤のケイタ君が、午前中にあたしが起こした事件を聞いて、説教しに柵に入ってきた。
あたしは毎度の事なので、ふんって感じで寝たふりしていたけど、「熊子、耳がピクピク動いているぞ。聞こえているのバレてるぞ。こっちに来い。」と言われ、渋々起き上がり、ケイタ君の前にお座りをした。
「熊子、確かに俺は、お前の相棒が引き取られて行った時に言った。友達の幸せを願えるのはすごいし偉いって。でもな、まずは自分の幸せも考えろ。分かるか?それにな、お前が選ばれないことで、他の子が引き取られることもあるだろうけど、そうじゃないこともあるだろう。お前があんなことしたら、犬を飼うことが怖くなって、諦めてしまう人だっているかもしれないんだぞ。お前が良い子なら、犬の評判も上がって、色んな人がここにやってきて、家が必要な子達が貰われていく。お前が幸せになることで、他の子たちも幸せになるってこともあるんだぞ。」
ケイタ君の言うこともオトナになったあたしは分かる。
でもね、なんていうか、ピンとこないんだ。マルコがあの人と出会った時みたいな、「あ、この人だ。」ってことがあたしにもあるような気がするんだ。あたしが、悪い子をするのも、本当はあたしは試しているのかもしれない。本当にこの人なのかな?って。本当にこの人を信じて良いのかな?って。
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