まだまだ知らない世界は存在する
14年前、つまり2008年4月に、初めてランニングレースなるものに参加した。セントラルパークの4マイル(6.4キロ)レースで、確か日曜日に開催だったと記憶している。
ただ走るなんて、世界で一番つまらないスポーツだと思っていたし、週末は深夜まで友達と飲みに行ったりが”当たり前”だと信じていた自分は、レース当日、早朝のセントラルパークに行き、愕然とした。
「えー!何、この人混み!!何でこんな朝っぱらから、こんなにセントラルパークに集まっているの??みんな、そんなに週末の朝っぱらか走りたいわけ??」
理解不能というか、正直、早朝のセントラルパークなんてNY在住20年以上でも行ったことがなく、よもや、こんな世界が存在していたなんて、全く、知らなかった。
そして、それが今では”当たり前”の世界に私は住んでいる。
去年、くるみ(保護犬)を飼って、またまた、驚きの世界が存在することを知った。セントラルパークのワンコ・コミュニティだ。
先住犬ミルキーもコーディも小型犬で、運動量が少ない種類だったのこともあり、散歩は家の近所を歩くぐらい。17年間、それが”犬の散歩”だと思って生きてきた。
だが、くるみをセントラルパークに散歩にほぼ同じ時間に連れて行くようになり、全く違う”犬の散歩ワールド”が存在することを知った。
まず、最初に気づいたのは、
”あれ?、この場所に集まるこの犬、この飼い主、いつも同じ顔ぶれだな。”
という点。
貯水池北側の広場と野球場の西側の広場ではメンバーが違う。最初の頃は、くるみを連れて、西側の広場のコミュニティにも何度か顔を出したが、いじめっ子わんこがいて、自然と足が遠のいた。気がつけば、私とくるみは、すっかり、セントラルパーク・犬の散歩歴40年のエドおじさんがリーダー的役割を果たしている野球場の西側の広場のコミュニティにメンバーになっていた。
初対面から、人によってはお節介に感じるアドバイスをしてくれるエドおじさんだが、自分からグイグイ入っていけない日本人には丁度良い。頼んでもないのに、くるみを、「俺のお気に入りのわんこのくるみだ。」とコミュニティメンバーに大声で紹介してくれる。最初の頃、「くるみは6ヶ月。」と、年齢まで伝えていてくれたが、何ヶ月経っても、「6ヶ月」と紹介し続けるのには閉口したが、それもお愛嬌。
その他、ほぼ毎日、挨拶するのが、こちらもセントラルパークの生き字引・シンディさん。3匹のシーズーを連れて、優雅に散歩をする日系3世のご婦人だ。パークレンジャーさん達とも顔見知りだし、ニューヨークのドッグウィスパーと言われているドッグウォーカーのキャッシーとは往年の友って感じ。いつも岩山に孤高な雰囲気で座っている、ロトワイラーとアフガンハンド(くるみの嫌いな黒い犬)の飼い主、嫌われ者ミッチからも慕われている様子。そう、ミッチには、エドおじさんや他の人からも、「絶対、近寄るな。」と耳打ちされている、わんこコミュニティでは残念な方面の有名人。そんな情報も、コミュニティにいないと入ってこない。だが、その噂を真に受けて、自分たちに害をなさない人や犬を嫌うのは私の趣味ではない。でも、何かあったらでは遅いので、”君子危うきに近寄らず”でやっていこうと方針が決まるのは良いことだろう。
いかにせよ、くるみを飼って、私の世界がまた広がった。いや、違うな。
知らない世界の存在に気づいた、ってことかな。
幾つになっても、世界は知らないことだらけ。だから、生きるって面白い。