ランナーの話:「OKちゃん」後編
ベルリンマラソンは、6大ワールドメジャーマラソンとして有名だ。だが、このベルリンマラソンに、ローラーブレードレース部門があるって、知ってました?
もちろん、私、黒リスは知らなかった。
OKちゃんが出るまでは。
そう、OKちゃんは、なんとこのインラインスケート(ローラーブレード)ベルリンマラソンに挑戦することに決め、黙々と練習を重ね、本当にレースに出た。そして、見事、完走した。
実は、OKちゃんがこのレースに出るという話を聞いた時、相方とこっそり、Youtubeで、レース動画を観た。大人数が、すごいスピードでコースを走る映像は大迫力。だが、、、OKちゃんのローラーブレード姿を知る自分達は、正直、ぶつかって転倒したら、大怪我じゃん!!と、非常に心配になった。だから、無事、完走したと聞いた時、本当に嬉しかった。
そして、つくづく思った。これは快挙だ。だって、周りのサブスリーランナーで、トレイルもやるとか、超ウルトラマラソンをやるって人はいるけど、ローラーブレーダーでマラソンレース出るって聞いたことがない。
OKちゃんは、唯一無二のサブスリーランナーになったのだ。
いや、それだけじゃない。OKちゃんは、ヨーロッパ旅行中、画伯にもなっていた。
昔からメトロポリタン美術館の年間会員になっていただけあって、美術への造詣が深いのは知っていた。だが、まさか、自分で旅先スケッチまで描くようになるとは・・・。
故障して走れなくなった時間、OKちゃんはどんどん別の扉を開いていったのだ。そして、その結果、
運命の人とも出会った。
それもバイオリニスト。
今、結婚し、OKちゃんは、バイオリニストの奥様からビオラの手ほどきを受けている。日々練習することが苦ではないOKちゃんだから、きっと、ビオラも着実に上達するだろう。
そんなOKちゃんを見ていると、故障したことは不幸ではなく、ラッキーなことだったんじゃないかとすら思えてくる。でも、違うんだな。OKちゃんが、不幸な出来事を努力で幸福に変えたのだ。
だけど、それでも、と黒リスは思う。
やっぱり、怪我・故障がOKちゃんの身に起こらなかったら、OKちゃんはずっと王道だけを進み続けただろう。道草を食う、回り道をする、そんな無駄なこと、なんでするんだろうって思っていたかもしれない。
でも、人生はたまには道草を食った方が、良いこともあるのだ。
そして、故障した膝が癒えた今、OKちゃんは、もっと豊かな王道を、進んでいるように思える。
きっと、NYCマラソンで再びサブスリーを取る日も近い。
(おしまい)