新米フォスター奮闘記3:マライア④
私たちに慣れてきた内弁慶のマライヤの甘噛み癖が酷くなってきた。靴箱から、私たちのランニングシューズを引っ張り出し始めた時には心臓が縮んだ。急遽、近所のペット用品店で、プラスチックというかゴム製のイガイガのついた噛むおもちゃを購入し与えた。ローハイドや骨、豚耳は与えてはいけないとレスキューから言われているのは、喉に詰まらせたりしない様にだと思うが、大きめのを与えておけば大丈夫じゃないかなぁ、とか思ったりした。というのも、ゴム製のおもちゃは最初は飛びつくが、どうやら私たちの手足の方が噛みごたえがあるらしく、すぐにまた噛んでくる。
「NO(ダメ)!」「NO(ダメ)!」「NO(ダメ)!」
午前中の時点で一体、何回、「ダメ!」を言っただろう?
何度かアパートから出て、慣れたであろう道を歩かせたりするのだが、それでも悪さは止まらない。終いには、相方が部屋でスピニングバイクをこぎ始めると、ケージ内で叫び出した。危ないからと、ケージに入れて、私が側にいるのだが、それでも、「出して!出して!出して!」「遊んで!遊んで!遊んで!」と大声で叫びまくる。
「NO!」「静かに!」と言い続ける自分の声が大きくなるのが分かる。
そして、遂に相方の限界がきた。
「うるさい!静かにしろ!」
相方もバイクから降りて、マライヤを叱る。マライヤは「ごめんなさい。」という様に、お腹を見せるが、鳴き止まない。
「もう、無理。返そう。」相方が言った。
え、そんな無責任な・・・。だが、仕事をしていない自分に比べ、相方は明日から仕事で会社に行かないといけない。休みの日に30分ぐらい自分の為に時間を使いたいのは当たり前。その時間すら取れないとなると恐怖を感じたのかもしれない。いや、それ以上に、この鳴き声が原因でアパートを追い出されることになったらという恐怖が大きかったと思う。
そして、私も正直な所、相当、参っていた。特に高音で遠くまで響く鳴き声だけは早急に何とかしなくてはと焦っていた。
だから、相方のその言葉は私の心の声の一つでもあり、すぐに反論できない自分もいた。
一方で、いや、でも、もう少しトライできることがあるのでは?もう少し頑張ってみようよ。そう相方に伝えてみようか?
だけど、そんなトライをしている間、この仔は、「お前なんかいらない。」「お前なんか嫌い。」という空気の中で過ごすとすれば、それはこの仔にとっても、そして、そんな気持ちを抱かざる負えない相方にとってもいいことだろうか。
そして、そんな1匹と一人に囲まれ過ごす自分もハッピーだろうか?
色んな考えが頭を巡る。だが、分かるのは今をなんとかしないといけないということだ。
(つづく)
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