スカイとマルコ(7)・あたしは悪い子
ケイタ君に連れられ、おじいさんわんこと一緒に犬舎を出た。
ホカホカ家族がキラキラ輝いて、待っていた。
「最初は、お父さんがリーシュをしっかり持って、皆さんで、この子に話しかけながら、この敷地内をゆっくり一周してみて下さい。その間、私は、この子(おじいさんわんこ)の散歩をさせながら見守るので、ご安心下さい。」
そう言って、ケイタ君があたしのリーシュをお父さんに渡す瞬間、あたしは全力で引っ張った。リーシュを取り損ね、焦った顔のお父さんを横目に、あたしはダッシュで離れ、敷地内を縦横無尽に駆け巡った。
「すみません、この子の方を一旦、見ていて貰えますか?」
一瞬呆然としたケイタ君だが、すぐに状況を把握し、おじいさんわんこのリーシュをお父さんに渡し、あたしを捕まえようと近づいてきた。
あたしは、敷地内の土の部分をすごい勢いて掘っては、コウタ君が近づいてきたら、逃げ、また、掘ることを繰り返した。
「熊子、そんな事、一度もした事ないじゃないか。どうしたんだ?こっちへおいで。」
ケイタ君が必死にあたしを落ち着かせようとするが、あたしはまるで聞かず、ワンワンと大きく吠えたり、ウーっと唸ったりして威嚇した。
そして、最後は、ホカホカ家族に向かって、牙を剥いて、突進した。
狙いは、さゆりちゃんだ。
「きゃーーーっ!」
さゆりちゃんは自分がターゲットだと悟り、叫び、後退りしようとしたが尻餅をついてしまった。一瞬の出来事で、お父さん、お母さんも固まっている。
しかし、おじいさんわんこが、瞬時にさゆりちゃんの前に立ち塞がり、あたしに向かって、「いい加減にしろっ!」と怒鳴り、突進したあたしを前足で、薙ぎ倒した。
「キャイーン!!」
今度はあたしの方が悲鳴をあげた。地面に転がされ、打ちつけた身体に痛みが走った。起き上がろうとした時、ケイタ君に後ろから抱き上げられた。
「熊子、どうしたんだ。なんであんなことしたんだ。」
ケイタ君の泣きそうな声。
「すみません、この子を一旦、犬舎に戻してきますので、もう少し、その犬をお願い出来ますか?すぐに戻りますので。」
ケイタ君は、必死に冷静さを保ち、太陽が沈んだみたいな家族に向かって頭を下げた。
あたしは、ケイタ君の腕の中でバタバタと暴れながら、家族の方を見ようと首を捻った。
さゆりちゃんが、おじいさんわんこの首に抱きついているのが見えた。
これでいい。
あたしは暴れるのを止めた。
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