私と保護犬くるみの物語:わたし➅”木を噛む”
「保護犬って言っても、まだ、仔犬だし、捨てられた記憶はないだろうから、トラウマみたいなものはないだろうね。」
そう思っていた。
だけど、2週間が過ぎ、くるみは結構難しい仔かもしれないと思い始めた。
まず、この仔は”舐める”ことを知らないみたいなのだ。
だから、全部、噛んで確かめる。表現する。
仔犬は甘噛みするのが自然なのは知っていたけど、手足のみならず、顔も噛んでくる。普通はペロペロ舐めるもんだと思うが、それが”甘噛み”してくるのだ。
「なんで、お前、鼻を噛む?!」
唇とか噛まれた日には仔犬とはいえ、非常に危険だ。
そういえば、身体を撫でられるのも、抱っこされるのも、心地良いとは感じてないようだ。最初はまだ、来たばかりで人見知りしているのかな、って思っていたけど、どうやら違う。
ワクチン摂取完了までは抱っこ散歩で、社会性を学ばせているのだが、街路樹に近づき、「ほら、葉っぱさんだよ。」「ほら、木だよ。」とか教えると、いきなり、それに噛み付く。葉っぱに噛みつきたくなるのは分かるが、木の幹に噛みつこうとしてもねぇ。。。っていうか、普通、まずはクンクン匂いを嗅ぐとかしないかね?
うーむ・・・、なんだろう、この違和感。今まで、出会ったどのワンコとも違うくるみに少々戸惑うわたしがいる。
そして、ふと、気づく。
ああ、この仔、母犬から本当に本当に小さい時に引き離されたんだな、と。生後7週間ぐらいでキルシェルターにいたくるみは、母犬から身体を沢山舐めてもらったり、噛みかたの強弱を教わったりの記憶や時間がほぼないのだろう。兄弟姉妹でじゃれ合って、やっていいこと、やっちゃいけないことを遊びから学ぶこともなかったのだろう。
その上、この仔はもうすでに去勢手術もされている。普通は、3ヶ月以上経ってからするものだけど。保護犬だから、譲渡前に去勢手術はされるのは仕方ないけど、それでも、この小さい身体で、もう十分に辛い経験をしている。くるみは何も選んでいない。選べない。今までも、そして、これからも。
くるみをもっと理解しよう。そして、くるみに必要なことは何かを考え、挑戦してみよう。トライアンドエラーになるかもしれないけど、諦めない。
くるみと幸せになるのを、決して、諦めない。
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