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ランナーの話:「津軽番長」中編

津軽番長が自分の特性に気づいたのは、2016年6月に参戦した岩手銀河100キロレースであろう。初のウルトラ距離レースである。

それを津軽番長は、何と、10時間34分47秒という好タイムで完走した。それは、上位に食い込む素晴らしい結果だった。

マラソンまでの距離でも、目標はクリアーしてきた。だが、努力した結果以上の結果が出たっ!と実感をしたのはこのウルトラマラソンだったのではないだろうか?つまり、津軽番長の特性は、バケモノ級の体力と肉体の強度の高さ。そして、鉄の胃袋。周りがバッタバッタと自ら落ちていく中、津軽番長は、「うりゃーっ!!まだまだ、イケるぜ。」とペース落ちずに、食べては、ガンガンと進めるのである。津軽のねぶた祭りで、大量の酒を浴びる様に飲みながら、跳ね踊る”ハネト”で鍛えた強靭な足腰、そして、長年、酒で鍛え抜かれた肝臓の働きは抜群で、疲労回復も超人的。

どこから見ても、津軽番長は、ウルトラ用の肉体を持つ女であった。

そして、丁度、その頃、津軽番長は、トレイルランニングにも目覚め始めた。ラン友達と車をシェアして、NYCから行ける山、ベアマウンテンに出没する様になった。そこで、確信したのであろう。自分は本来、津軽の野生児だと。ロードより、トレイル。津軽番長の進むべきランニング道が決まった。ウルトラトレイル100マイルだ。それも、フラットよりテクニカルの方が血沸き肉踊る。

2017年5月のベアマウンテントレイルレース・マラソン距離で、女子4位入賞になった後、津軽番長の目標は、完走ではなく、表彰台狙いに変化した様だ。4位が嬉しかったというより、悔しかったのだろう。その差は、近くて遠い。

それからの津軽番長の躍進は凄まじかった。ウルトラトレイル50マイルレースを何本かこなし、どれも入賞まではいかずとも、新人トレイルランナーとしては、あり得ない程の速さでゴールした。

人間離れした体力と精神力にものを言わせ、仕事明け、寝ないで山に通い、だからと言って、飲みの付き合いも断らず、いや、それどころか、自ら企画し、そこでも鬼神の働きを見せ、また、仕事に行く。

そんな日々を送る津軽番長にとって、実は、寝ないで走る100マイルレースは、まさに、”私の為にあるレース”であった。

(つづく)




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