スカイとマルコ(24)・ありえない
「スカイ、僕を見つけてくれてありがとう。」
マルコの声が聞こえた。
点滴ってやつで、少し元気になったのか、マルコは銀色の台の上から、あたしの心に直接話しかけが出来るようになっていた。
「マルコ、あんた、どうしたの?何があったの?あんた、幸せに暮らしているんじゃないかったの?」
「うん。幸せに暮らしていたよ。時枝さんとの暮らしは、本当に幸せだったよ。下界に落とされて、本当に良かったよ。落とされなかったら、時江さんに会えなかったからね。」
「でも、じゃぁ、なんで、そんなボロボロになってるの?おかしいじゃない?なんでっ?」
マルコは、時枝さんが急に倒れてしまったこと、そして、その後のことを淡々と話した。
「じゃぁ、何、その甥っ子さんって人間が、マルコをこんな目に合わせたってこと?!許せないっ!!やっぱり、人間って最悪。許せないっ!」
あたしは身体中が爆発するんじゃないと思うほどの怒りを感じ、毛を逆立て、吠えまくった。
急に吠えて暴れそうになるあたしを、月子さんが抱きしめた。
「ソラ、落ち着いて。お願い。今、あなたが暴れると、あなたの友達が困るのよ。分かる?お願い、あなたの友達の為に落ち着いて。」
分かるよ、月子さん、あなたの言っていることも。
でも、でも、あたしのこの怒り、悲しみはどうしたらいいの?
大切なものを壊されたこの気持ち、どうしたらいいの?
「スカイ、僕、ちょっと疲れたから、眠るね。だから、また、あとでね。」
マルコはいつもまわりを良くみている。ぼーっとしているように見えて、一番良い解決方法を分かっているんだ。
あたしは怒りの矛先をどこに向けて良いのか分からず、しょんぼりと首を垂れ、月子さんに言われるがまま、診察室を出た。
マルコの、”下界に落とされて良かった。”って言っていた言葉が耳に残っていた。