絶対的障害者の本音・『ハンチバック』 直木賞作家/市川沙央
作家の彼女のことは、Yahoo!ニュースの直木賞受賞の記事で知った。顔写真が載っていて、非常に個性的な顔立ちというより、変わった骨格だと思った。その後、彼女が、筋疾患『先天性ミオパチー』という聞きなれない障害を抱えていることを知った。
数日前、図書館で、彼女の作品「ハンチバック」を借りて読んだ。
主人公は、彼女と同じ障害を抱える同じ年齢の女性。
私は昔から、障害者を無垢な存在として認識(扱う)することに、非常に違和感を持っていた。清らかな心を持ち、性欲を持つこともない人間という位置付けは何を根拠に?と疑問に思っていた。
それはまるで、権威のあったり、頭脳明晰と言われる人物が、性根も真っ当で、立派だと信じ込むのと同じぐらい馬鹿馬鹿しい思い込みだと思っている。そう思いたい、信じたい人間側の都合で、そんなレッテルを貼っているだけのことじゃないだろうか。
そんなひん曲がった性格の私なので、この小説は、ストンと腑に落ちた。
いいんじゃない、本音をぶちまけて。それにしても、凄まじい恨み節だなぁ。おっと、紙の本が好きっていう健常者を、ここまでこき下ろすか。
それ、私のことじゃん。すごいなぁ、ただ、「紙の本が好きなら理由」を述べているだけなのに、それ自体に、罪悪感を抱かせようとするとは、障害者もやるねぇ。
きっと、私は、この小説に出てくる登場人物としては、田中に近いのかな、とも感じた。田中は、障害を抱えた主人公を”可哀想な人”と見ていない。
それはつまり、相手も同等に見ているということだ。
だが、その結果、彼は思い知る。同等であれるわけがないことに。
最後まで読み、私も思い知らせれた。そして、願った。
次は健常者に生まれ変わって、健常者の苦しみを味わってみてね、と。