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スカイとマルコ(28)・マルコのカケラ

あたしは、人間が”遺灰”と呼ぶ、白い粉がなんなのかすぐに分かった。
マルコのカケラだ。
魂はもう神様と天界へ戻ってしまったけど、でも、あたしと一緒に犬として生きたカケラがここにある。
あたしは、月子さんの手からそれを奪い、ビニールを引きちぎり、一気に食べ切った。これでずっとマルコはあたしの中で一緒に生きる。そして、あたしはマルコの分まで生き続けてやる。

きっと、月子さんは呆れているだろう。
そう思って、見上げると、月子さんはボタボタと涙を流していた。
「いいよ、いいよ。ソラがそれでいいなら、いいよ。」と言いながら。

ある日、あたしは気づいた。月子さんが、納豆というすごい臭いのものと、白いご飯と茶色い飲み物だけをここ毎日、食べていることに。確か、前は毎日、違う食べ物を食べていたはずだ。あたし達犬と違って。

「ん?ソラ、どうした?そんなにあたしを見て。ん?あ、納豆の臭い?え、食べたいの?あ、でも、ダメだよ。ネギが入っているから。」

違う、違う、どうして毎日、同じものを食べているの?

何度か、納豆と白いご飯を食べている時、前足でチョンチョンと合図をして、見つめた。

「うーむ、なんだろう?・・・あ、もしかして、私が毎日、納豆ご飯を食べていることに気づいたということ?」

あたしは、ワンと吠えた。

あーうー、と少し考えてから、月子さんが話し始めた。

「あなたは頭が良いから、隠し事はしないね。実は、あなたの相棒の病院代が予想をはるかに超えていたわけ。3日間ぐらいの入院だったのにね。犬を飼うと決めた時、これぐらいはかかるかなって思って、取っておいた1年分のお金がほぼなくなったのよ。だから、どこかでセーブしようと思って、毎日、納豆ご飯。あ、ソラは心配しなくて良い。ソラのご飯とトリートはそのまま大丈夫だから。」

そう言って、また、ネバネバしたものを食べ始めた。

少し考え、あたしは、これからずっとこの人間と生きていこうと決めた。
マルコのカケラと一緒に。

朝、起きて、お散歩に行く。朝日が出ていたら、一緒に朝日を浴び、雨なら、一緒に濡れる。
同じ風を感じ、鳥が一斉に飛び立てば、同じ方向を見てる。
それに気づき、目を合わせ、ニヤッとする。

お腹がぺこぺこになり、ご飯を食べる。
いつも美味しい。
時々、トリートを貰う。
いつも嬉しい。

月子さんが仕事というものをしている間、あたしはお昼寝。
でもね、何かあったらいつでも月子さんを守れるように、本当は寝てなんかいない。目をつぶっているだけ。

仕事を終えた月子さんと、町のパトロール。
商店街って言われるお店屋さんがたくさんある場所で、月子さんがお金ってものを使って、食べ物を得る。

戻ったら、ご飯。
やっぱり、美味しい。

お腹がいっぱいになったら、眠たくなる。
月子さんもリラックスしているのが分かるから、あたしは本当に眠たくなる。気づくと寝ている。

そして、また、朝がくる。




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