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都知事は新型コロナウイルスだから何をしても構わないのか?

ー都議会は行政へのチェック機能をきちんと果たせー

 私は2020年東京都議会第3定例会に提出された東京都新型コロナウイルス感染症対策条例の改正案に反対するため、この場所に立っています。
 今回の都議会に提出されたものは改正案です。ということはこの条例は既に成立しています。それはいつでしょう。2020年4月7日です。2020年4月7日はどんな日であったと言えば政府が新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項の規定に基づき、緊急事態宣言を発令した日です。
 その当日にドサクサ紛れに成立させたのが東京都新型コロナウイルス感染症対策条例と言えるでしょう。東京都新型コロナウイルス感染症対策条例は1条から12条まで条文があります。

東京都新型コロナウイルス感染症対策条例について(専決処分)_PAGE0000

(都の新型コロナ感染症対策条例。緊急事態宣言発令前日の4月6日に起案。緊急事態宣言開始日の4月7日に決定し交付)

 当時の8条現在は11条に基本的人権の尊重として「都民の自由と権利が尊重されるべきことに鑑み、新型コロナウイルス感染症対策を実施する場合において、都民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型コロナウイルス感染症対策を実施するため必要最小限のものでなければならない。」と規定されています。この条例自体が基本的人権と抵触する危険性があることを認めているわけです。そして第4条として都民及び事業者の責務も規定しています。基本的人権と抵触する可能性や都民・事業者に対する部分もある。だから条例を作る際には十分な審議が必要だったはずです。

W1024Q75_新型コロナ条例_PAGE0002

(基本的人権の尊重を規定した成立当時の東京都新型コロナウイルス感染症対策条例の第8条部分)

 ところが東京都が行った行為はそれと真逆な行為です。東京都は専決処分という行為で条例を成立させてしまいました。 専決処分とは本来、議会の議決・決定を経なければならない事柄について、知事などが地方自治法の規定に基づいて、議会の議決の前に自ら処理することを言います。
 地方自治法で専決処分は認められていますが、専決処分をするためには厳密な条件が定められています。
1)普通地方公共団体の議会が成立しないとき
2)第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき
3)普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき
4)議会において議決すべき事件を議決しないとき


 これに該当するか調べてみました。都議会第1回定例会が2月12日から3月27日まで開催されていました。ですから1)2)4)には確実に該当しません。都議会議員が出張や視察をしていて集まれないという可能性があるかと思って情報公開請求をして確認しました。そういう届は出ていません。ですから都議会議員はこの時期東京都にいました。ですから3)にも該当しません。しかも4月17日に都議会第1回臨時会を開催しています。
 そもそも、新型コロナウイルスの日本での感染確認は2020年1月17日です。東京都は1月30日に第1回東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開催し、2月1日に新型コロナウイルスが指定感染症となりました。ですから第1回都議会定例会の開催中に「東京都新型コロナウイルス感染症対策条例」案を提出し、都議会で審議を図ることは十分に可能だったと思われます。なぜそうしなかったのでしょう。
 第1回都議会開催前には条例をつくるほど切迫するとは思えなかった。それならばなぜ4月17日の都議会第1回臨時会に提出して審議させなかったのでしょうか。

 緊急事態宣言に合わせて条例を作りたい。それを持って自分の手柄にして都知事選に有利にしたいとでも考えたのでしょうか。
 新型コロナウイルスに対しての真摯な取り組みだとは私には思えません。
 

 そのためか条例は、7月30日に第1回の改正が10月に第2回目の改正という事態になっています。それは東京都の手続軽視の表れが原因ではないですか。
 そして第2回目の改正という時点になって始めてパブリックコメントも実施しました。先ほど言ったようにこの条例は基本的人権と抵触する可能性があります。そういう条例を成立した後の改正時点になって慌ててパブリックコメントを実施する。おかしいではありませんか。
 都民ファーストの会が提出予定の罰則付きの特別措置条例と比べると具体性がないということで反対の声が大きくないようですが、都議会に提出できる条例を提出しないで専決処分で条例を制定して、都民や事業者に関わる部分を次から次に改正するというやり方はまともではありません。

 最後に都議会議員の皆さまへお願いです。国会と違い、地方議会は二元代表を取っています。知事の横暴を止められるのは都議会議員の皆さまです。
 新型コロナウイルスだから行政が何でも好き勝手にできると言うことにはならない。にも関わらず、感染症予防を口実にいつまでも一般人の傍聴を禁止しモニターで視聴できればいいという手法を取るのは間違いです。
 傍聴人を締め出して審議をしたいなら、法令上の規定がある秘密会の手続をとって実行して下さい。手続を軽視しないで下さい。

W1440Q75_20200227都議会議事堂における新型コロナウイルス感染防止策(案)_PAGE0000

(当初は3月15日までの傍聴禁止措置をいつまでも継続中)

 もう成立したからではなく、きちんと審議して問題点を指摘して下さい。あの時の都議会は専決で条例は可決させたけどきちんと審議して、問題点を指摘した素晴らしい都議会だったと後世の人々に評価させる議会であることを願って私の話を終わりにします。ありがとうございました。

(2020年10月6日。コロナ対策に便乗した戦争・治安・改憲NO!集会&実行委員会が主催した都庁前行動での発言予定稿)

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