朝鮮人犠牲者追悼式に小池都知事が追悼文を送付しない件で東京都に質問状を
はじめに
朝鮮人犠牲者追悼式に歴代の東京都知事は追悼文を送付していた。小池都知事も2016年には追悼文を送付した。しかしながら2017年以降、朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送ることを取りやめた。
2024年の東京都知事選挙でも朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送るかどうかが争点の一つになった。
にも拘わらず東京都知事に当選した小池都知事は2024年の朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送らないことを表明している。
昨年、2023年は関東大震災100周年ということで、東京都・東村山市総合防災訓練の際に「関東大震災100年 出張博物館」という企画展示を行ったが、その展示の中には関東大震災の際に朝鮮人虐殺があったという事実について触れられていなかった(注1)。 災害時に流言飛語が飛ぶのは現在でも起きており、その対策を自治体として率先してとる必要があるのではないか。 元東京都知事の石原慎太郎氏が銀座に装甲車を走らせた「ビックレスキュー東京2020~首都を救え~」に対する抗議がきっかけで結成し、東京都総合防災訓練に合わせ実行委員会を立ち上げてきた米軍・自衛隊参加の東京都総合防災訓練に反対する実行委員会(以下防災実と略)の視点で、東京都に申し入れをすることになった。
提出先と質問事項の検討
防災実は東京都総合防災訓練に関し、担当局の総務局総合防災部と毎年、申し入れと交渉をしている。そういう積み重ねがあるので申し入れ文の中身は比較的スムーズに決まった。
悩んだのは申し入れ文の提出先をどこにするかである。
そして、私たちが申し入れ文を作ろうと検討する直前の、2024年8月2日に「東京都人権尊重条例に基づき不当な差別的言動と認めた表現活動の概要等について」が発表された(注2)
【「朝鮮帰れ、祖国の朝鮮、祖国へ帰れ、お前らはゴミなんだよ、クズなんだよ、早く帰れよ、日本にいらない」との表現がなされた令和5年9月1日の東京都墨田区内の表現活動】
上記発言はどこで行われたものか。という点に注目するなら総務局人権部が主な交渉先になろう。
この発言は都立公園での出来事と噂されており、この噂が事実であるならこういう発言する人々に対して公園の占有許可を出したのか。出したとしたらその理由はどこにあるのか。に注目するなら建設局公園緑地部。
上記のような発言が東京都内で起きた原因について考察しているか。そしてこのような発言が実際の災害現場で発生したり、影響が出ないように未然の予防対策をとれという形なら総務局総合防災部。
少し考えただけでも、朝鮮人犠牲者追悼式に小池都知事が追悼文を送らないことに対しての申し入れ文の送り先の対象先は複数の部署に該当する可能性がある。どこにするか。
朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送らないという判断をしたのは小池都知事。だから小池都知事を対象にすべきだ。そうであるなら申し入れ文の対象は知事部局の政策企画局。
また、ただ申し入れをしただけでは「文書は受け取りました。知事には伝えます」という形になる可能性がある。だったら質問項目を作って、回答を求めよう。質問事項は小池都知事じゃなきゃ答えられない項目にしよう。
仲間と相談して決めた質問事項は以下の3点である。
質問事項
1)小池百合子氏が都知事に就任する以前から「関東大震災並びに都内戦災遭難者秋季慰霊大法要」と「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」は別々に開催されており、歴代の知事は「関東大震災並びに都内戦災遭難者秋季慰霊大法要」と「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」の両方に追悼文を送付しています。
小池都知事も2016年には「関東大震災並びに都内戦災遭難者秋季慰霊大法要」と「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」の両方に追悼文を送ったのに、2017年以降取りやめました。
どういう理由で小池都知事は2016年に「関東大震災並びに都内戦災遭難者秋季慰霊大法要」と「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」の両方に追悼文を送ったのか説明ください。
2)「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」には2016年まで歴代の東京都知事から追悼文が送られていました。それをいきなり取りやめるなら「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」の主催者が小池都知事に説明を求めるのは当然だと私たちは考えます。
小池都知事自ら「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」の主催者に対して、追悼文取りやめの理由を説明しましたか。
説明したなら、その日時内容を、説明をしていないなら、その理由について教えてください。
3)小池都知事は関東大震災の際に虐殺された朝鮮人犠牲者は一人もいないという認識なのですか。お答えください。
『関東大震災101年 朝鮮人・中国人犠牲者への追悼メッセージを今年こそ送られることを強く求めます』と題した申し入れ文と質問事項に対し、以下の10団体が賛同してくれた。
1)沖縄への偏見をゆるさない市民有志2)差別・排外主義に反対する連絡会3)STOP改憲・北区の会4)土地等利用規制法を考える板橋の会5)日韓民衆連帯委員会6)ヘイトスピーチをゆるさない中野7)ヘイトスピーチ許さない・練馬8)むさしのから差別をなくす連絡会9)有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会10)労働運動活動者評議会(50音順)
交渉の様子
団体の賛同を求める時に「沖縄への偏見をゆるさない市民有志」も独自に申し入れと質問をするという方針が示されたので、東京都政策企画局の同意をとったうえで、私たちの文書と「沖縄への偏見をゆるさない市民有志」の両方の文書を前もって送ったうえで、8月28日の交渉に臨んだ。
交渉をする前に都庁の中にある都庁記者クラブに対し、プレスリリースを投げ込みをした。
そのうえで、8月28日に東京都政策企画局と交渉した。私たちは5人。東京都は一人担当課長が出てきた。
担当課長は、私たちの申し入れに関して、熱心にメモは取っていたが、質問事項に対して回答するかどうかの明言は避けたので、9月11日までに回答を求めているので、何らかの返答をしてほしい。と要望した。
終わりに
自然災害の犠牲者と虐殺の犠牲者は違う。都知事という立場で、加害の歴史に向き合い、二度とこのような惨事をおこしてはならないと警鐘を鳴らすことは、災害が頻発するこの国で、差別・偏見に満ちたデマ、フェイク情報を蔓延させないためにも不可欠な責務であると私たちは考えている。
それだからこそ、都知事として3つの質問事項にしっかり答える必要があり、私たちの質問に対し、万が一回答しないならば、回答しなかった事実を各マスコミや都議会議員など示したいと考えている。
注1ー「関東大震災100周年 出張博物館」を小池都知事が見学する様子は下記参照
【終了しました】9月3日 訓練会場図(展示体験・緊急車両展示・応急復旧訓練等) | 東村山市 (city.higashimurayama.tokyo.jp)
注2ー2024年8月2日付『東京都人権尊重条例に基づき不当な差別的言動と認めた表現活動の概要等について』の全文は下記参照
不当な差別的言動と認めた表現活動の概要等|東京都 (tokyo.lg.jp)
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