自粛要請しながら補償をしない東京都
ー東京都のご都合主義に騙されないで批判の声をー
2020年4月7日、閣議決定された緊急経済対策に基づいて、全国の世帯に向けて1住所につき2枚ずつの布製マスク配布を決めた政府に対し、SNSでハッシュタグ自粛と補償はセットだろう、自粛と給付はセットだろうという広範な批判の声がおきました。これらの批判の声は主に政府に向けられたものですが、東京都の政策も批判に値するでしょう。その実例を紹介します。
東京都は「東京都感染拡大防止協力金」を作りました。協力金の趣旨を引用します。
(引用開始)新型コロナウイルスによる感染が拡大する中、東京都は、「新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等」(令和2年4月10日公表、以下「緊急事態措置」といいます。)において、事業者の皆様に施設の使用停止や施設の営業時間の短縮(以下「休業等」といいます。)へのご協力をお願いいたしました。
この依頼に応じて、休業等の対象となる施設(以下「対象施設」といいます。)を運営されている方で、休業等に全面的に協力いただける中小企業、個人事業主等の皆様に対して、「東京都感染拡大防止協力金」(以下「協力金」といいます。)を支給いたします。(引用終了)
パッと見ただけでは良さそうな事が書いてありますが、そこには裏があります。なぜなら東京都が休業要請の前から自粛要請をしているという事実があるからです。
宮城県のアイドルグループPOEMが2020年3月30日付ツイッター上に以下の文書を載せました。引用します。
(引用開始)【重要報告】
東京都からの下記資料に基づき、下記期間のイベントの中止、延期等の対応をさせて頂きます。POEMの為にスケジュールを空けていただいた方々、ご理解、ご協力のほど何卒宜しくお願い致します。
4/5 水戸定期 中止、4/6 東京定期 中止、4/11 Tokyo Candoll 中止、4/12 永瀬愛瑠 生誕祭 延期(引用終了)
この告知の下に『イベント開催の取扱いについて(依頼)』という文書が添付されており、添付文の右肩に31総防管第3415号令和2年3月26日という文書番号と日付が、題の上には東京都総務局長遠藤雅彦名と記され、文書の下部に担当として総務局総合防災部防災管理課と代表番号及び内線として60-215という記載があります。参考ー情報公開で入手した文書
この文書の形式から事務所が添付した文書は東京都からの公式文書であると判断することが可能です。そして公式文書であるなら東京都に情報公開請求をすることでこの文書を出した経緯等を確認することができるので、私は3月30日に東京都に対し情報公開請求を行ない、東京都から5月27日付の開示決定通知書を受取り、予想通り事務所が添付した文書は東京都が出した公式文書であるということが確認できました。また関連文書を入手したことで判明した事実について報告します。
東京都は事務所が明らかにした文書の前に、『イベント開催の取扱いについて(依頼)』を出していました。日付は以下の通りです。3月24日にイベント開催団体及び施設管理者に対し、3月25日には3つのイベント開催関係団体と、93のイベント開催関係団体及び施設管理者に対し、3月26日は49のスポーツ、文化、演劇などの興行のうち、商業目的で不特定多数の観客を動員するイベント開催関係団体でイベント主催者の住所等が確認できたイベントに、3月27日は収容人数が200人以上のライブハウス及び東京都公安委員会から特定遊興飲食店営業(その他)許可を受けている営業所のうち、主にライブハウスとして利用している107箇所に対して出しています。
文書名はすべて『イベント開催の取扱いについて(依頼)』で共通しています。この文書はイベント開催を考えていない団体にイベントを開催してほしいという趣旨なわけがなく、イベント開催を計画している団体に対しイベント開催を見直してくれという趣旨であることは文書の中身から明らかであり、東京都の狙いがイベントの延期なり中止の要請であることは言うまでもありません。
そして『イベント開催の取扱いについて(依頼)』を受けとったイベント開催団体や事務所、ライブハウスはどのような対応をしたでしょうか。
東京都が唯一送り先を明らかにしたK-1実行委員会は3月28日のイベントに関し以下のように発表しました。注
(引用開始)K-1実行委員会では新型コロナウイルスによる肺炎(感染症)の感染を防止するため、東京都と後楽園ホールと協議した結果「無観客大会」として行うことが決定しました。(引用終了)
そしてチケットを払い戻しています。東京都の要請がイベント開催に対し大きな影響を与えていることはK-1実行委員会や上記で紹介したアイドル事務所の例からも想像出来るでしょう。
東京都の『イベント開催の取扱いについて(依頼)』の要請によってイベント開催を取りやめたり、観客を入れない形で興業を行うことによる損失に対して、イベント主催者やライブハウスが自粛したその時点から協力金支給の対象にするのが当たり前の行為ではないでしょうか。
しかしながら東京都は補償に対して何も考えていません。
私の「協力要請を出す際に休業補償等について検討したならその文書」という情報公開請求に対し、「当該公文書については、実施機関では作成及び取得しておらず、存在しない」という回答をし、私の3月24日に『イベント開催の取扱いについて(依頼)』を出した以上、「東京都感染拡大防止協力金」の配布対象は3月24日からでないとおかしいのではという産業労働局への電話問い合わせに対し、「協力金は休業要請に対するもので自粛要請に対するものではない」という趣旨の発言をしました。
またイベント自粛要請の各団体がK-1実行委員会以外全て黒塗りにした理由として「公表を伴うインフルエンザ等特別措置法の要請でないにもかかわらず、開示請求によって本依頼文の宛先が公になることにより、休業していないという事実が明らかになり当該法人等又は当該事業を営む個人の事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるため」としています。
そもそも政府が東京都に対し緊急事態宣言が出されたのは4月7日であり、3月24日から3月27日まではイベント開催団体や施設管理者、ライブハウスなどに対してイベントを自粛要請するための法的根拠はありません。それを良いことに協力金の支払い期間を値切る。
そしてどこのイベント主催やライブハウスに対しイベント自粛をしたかを非公開にすることで、イベント自粛したイベント主催者やライブハウスが団結しないように図る。
これが東京都のやり方です。
自粛を要請をするなら補償しろという当たり前の声をあげて行きましょう。
(初出『府中萬歩記』第76号を一部訂正(2020年6月30日発行)
注ーk-1実行委員会のプレスリリース
3月28日(土)東京・後楽園ホール「Krush.112」に関するお知らせ ※追記あり※ https://www.k-1.co.jp/news/32121/
追伸 東京都によって黒塗りで公開された2020年3月27日分の送付先一覧。