朝のコピー短歌(2019.11.20)「絶対に


「絶対に〇〇しない」の8割は
“してしまうかも”の裏返し


コピーを書いていて、ほとんど使わない言葉というのがいくつかある。
そのひとつが、「絶対」。

誇張・誇大表現につながるからという理由もあるけれど、
わたしの場合は他にも理由があって、それがこれ。
「絶対」は、強くて確実なものに見えるけれど、
人が話すことで急にとてもあやうい言葉になってしまうから。

「私、絶対〇〇しないから!」
こう言ったら、この人は、そのことをしそうでしそうで仕方ない、または未来にしてしまう可能性があるのが自分でわかっていることが多い。だから、無意識にブレーキをかけるためにも強く言ったりする。

ここ2〜3年で、「絶対〇〇しない」と言い切った知り合いが、いまは「〇〇している」ということがいくつかあった。

ひとりは、コーラスをしていて、趣味として楽しんでいたけれど、セミプロのコースに行くかどうかという話で。「わたしにはちょっと無理、セミプロの仲間入りは絶対にないと思う」という感じ。自信のなさからくる「絶対にない」にさらに「思う」がついていた。その瞬間、うーん、ほんとうは興味があるんだなと、誰でもわかる。

もうひとりは、霊能者になれると占い師に言われ、「能力があっても、わたしは絶対にやらない」と言い切っていた。こっちは、素直にならないんだと思っていたのだけれど、舌の根がかわかないうちに霊能者を名乗ってしまった。

また逆で、「絶対、中を覗かないでください」と言われたのに娘が機織りをしている姿を見てしまった『つるの恩返し』や、「決してフタを開けてはいけない」と乙姫に言われたのに開けてしまった『浦嶋太郎』も。

「絶対〜」という言葉は、他人に言っても、自分に言っても、強い反対の衝動を呼び起こす作用があると思う。無意識から意識へと引っ張り上げる、まさに眠っていた赤子を起こすようなこともある。

ほとんど使うことはないのだけれど、自分の口から不意に「絶対」が飛び出したときは、自分の手から「絶対」という文字列が打ち出されたときは、きっと感情が理性に勝っている。ちょっと待てよ、落ち着けよとブレーキをかけたほうがよさそうだ。

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