「閑話休題」は、生ものです。


朝のコピー短歌(2020.05.27)

「閑話休題」使うとちょっとカッコいい
生ものだから注意も必要?


久しぶりのnoteです。
きっかけは、今朝見た、広告系出版社のSNS投稿。


FBの投稿文はこれ。※まるっと転用させていただきます。

「今回のコラムは、コロナに関してはちょっと閑話休題。今回は、ここ1年ほどの間で、こちらアメリカで話題になったキャンペーンや目立った広告について、楽しく語りたいと思います!」

この文章、違和感なく読めましたか?
わたしはうん?とひっかかりました。

「閑話休題」の使い方、これでよかったんだっけ?出版社なのに間違ってない?と私の心の悪魔が・・・

「閑話休題」の本来の意味は? 

読みは「かんわきゅうだい」、意味は「話を元に戻すと」です。いくつか辞書をめくってみました。

広辞苑 第五版 によると・・・
【閑話】①ゆったりとしてものしずかな話。むだばなし。
【閑話休題】(話を本筋にもどすときに用いる語)むだばなしはさておいて。それはさておき。さて。
新明解 第五版 によると・・・
【閑話】「むだ話」の意の漢語的表現
【閑話休題】横道にそれた話を本筋に戻す、という意を表す語。[接続詞「さて」のように、文の初めに置いて使う]

語源とされているのは、中国の明時代に書かれた『水滸伝』。
第10章に「しばらく閑話を把りて休題し、ただし正話を説わんや。」(雑談をやめて、本題に戻ろう)という一文が由来です。

つまり、閑話休題は、「ムダ話をやめて、本題に戻しますよー」という
主に文章で使われる言葉。最近はスピーチなどで使う方もいますが。


「閑話休題」のいちばん間違われやすい使い方は?

多くの人が間違えやすいパターンはこれ。
本題から話が横道にそれる場合に前置きとして使ってしまうというもの。

例えば(麻布で新しく立てるビルの話をしていて)・・・・
閑話休題。麻布にあるラーメン屋でおいしい店があるんです。

というように、本来は「話はすこしそれますが」「余談になりますが」を
前置きとして「閑話休題」を入れてしまうパターンです。
逆に使ってしまっています。

この間違いは、恥ずかしい。なんとしても避けたいものです。


ムダ話じゃないのに「閑話休題」は使えるの?

例えに出した出版社の投稿は、コロナに関しても役に立つ話だったはず。
「もしかして出版社なのに間違ってる?指摘したい!」という心の悪魔が興奮状態。

こういうときは、そのまま突っ走ってはいけません。大けがのもとです。
まずは、調べてみることに。
普通の辞書にはここまで書いてない。ならば四字熟語辞典です。

三省堂 新明解四字熟語辞典によると・・・
【閑話休題】
それはさておき。ともかく。話が横道にそれたのを本筋に戻すときにいう語。主として文章中で用いる。▽「閑話」は暇にまかせてする無駄話のこと。「休題」は話すことをやめること。また、話題を転ずること。「閑」は「間」とも書く。

話題を転じるときにも使うと、あるではないですか。
他にもサイトを調べてみると、いくつか「その話は置いておいて、次の話題に移ります」というときにも使うと事例が紹介されているではありませんか。
それなら、「コロナに関してはちょっと閑話休題。」は正しい使い方ということになります。
なんとなく「休題」だけを上手くフィーチャーしただけの使い方にも見えてしまいますが。まだ、悪魔が悪あがきしています(笑)。

なんでこんな使い方もOKになったのでしょうか・・・。


「閑話休題」類語は英語訳って?

閑話休題を、英語に直すと「now」や「well」になるのですが、なんとも大雑把な感じです。さて、それでは、でいいということになるので。
閑話休題の類語も、一時保留を意味して別の話題に移るときに使うとして、
「それはさておき」、「それは別にして」などが挙げられています。

私個人の考察としては、おそらく、もともとは「ムダ話をやめて本題にもどす」だったのが、時代を経て、類語や英語訳なども入ってきて、ムダ話だけでなく、本題から次の本題へとつなぐところまでは許容されるようになったのかと思われます。

最後に・・・


話はそれますが、誤用から本来の意味が変わって使われるようになった言葉、けっこうありますよね。

平成14年度「国語に関する世論調査」の結果について
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/h14/ によると、

「役不足」や「確信犯」、「流れに棹さす」は、すでに正しい意味で使っている人よりも間違った意味で使っている人のほうが多いという結果に。
また「気の置けない」については半分の人が正しく理解し、半分の人が間違って理解しているとか。

正しい意味を知りたい方は、上のURLへ。「5.慣用句等の認知・使用と理解」をご覧ください。


閑話休題。

今回出版社のSNS担当者が使った「閑話休題」は
語源の意味からは少し違いますが、現代では間違いではないということ。

「言葉は生もの」です。

もしかすると10年後には、話が脇道にそれるときに使うのも間違いではなくなっているかもしれません。

とにかく、言葉や表現にひっかかったら調べてみる。
意外な発見があったり、誤用が正用に変わっていたり。
調べるだけでなく、まとめを書いてみる。
インプットして、アウトプットすることで知識を定着させる。
習慣づけたいと思います。


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