朝のコピー短歌(2019.11.09)「去り嫌い」

「去り嫌い」短いボディコピーでは
同じ言葉は二度使わない


去り嫌い。コピーライターになる前、20代前半、
コピーの先生から教わったテクニックのひとつ。
それが、短歌や俳句に通じていたことを知ったのはごく最近のこと。

キャッチコピーと同じフレーズを、ボディコピーで繰り返さない。
ボディコピーで一度言った内容を、違う言葉で言い換えない。
だいたい、そんなことなんだけれど。

30歳で東京に希望転勤で出てきて、初めて大きな仕事をしたのが、秋限定で出るビールの新聞15段と車内吊り(新聞はお蔵入りになったんだっけ?)。その仕事に携わるきっかけは、レシピをつくるかもしれないから大阪から来た女性のコピーライターさん、ピンで使っていい?と会社にオファーがあったから。

キャッチコピーはもうできていて、ボディコピーをつくってみてと言われて。「去り嫌い」を意識してボディコピーをつくっていたのだけれど、最後にクリエイティブ・ディレクターさんが、ボディコピーの最後から2行目にキャッチコピーをそのまま付け足した。

「秋。ビール。うまい。」

一瞬、え?と思ったのですが、すごい方なので「去り嫌い」なんて言葉を出しても釈迦に説法。そのことには触れずに仕上げていかれる様子を見ていたのだけれど。
見れば見るほど、読めば読むほど、そこにもう一度キャチコピーが入っていないとこのボディコピーは存在しないかというくらい、大事な一行になっていくのです。

この前から、ルールと例外、型破りについてちょこちょこ書いているけれど、ルールや決まり事にのっとってやってみて、その上で違うことをやってみる。ビールの仕事のクリエイティブ・ディレクターさんにはそういうことをわたしの目の前でやってくださり、直に教えていただいた。自分の部下でも、同じ会社のコピーライターでもないのに。

その方は、今年で定年を迎えられる。彼は、また別の機会にお話ししますが、わたしがフリーになるきっかけをつくってくださった三人のうちの一人。毎年、今年も無事にコピーライターとして生きていますという報告を兼ねて年の瀬の贈りものを続けてきた。今年のお歳暮は、メッセージカードではなく、封筒入り便箋になりそうな予感がしている。


迷走中みそひとメモ

コピーの先生は、コピーの基本を教え、
コピーの舞台監督は、コピーのアドリブを教えてくれる。

書き上がったときに、ああ、こっちを短歌にすればよかったかとも。

でもやっぱり、言いたいことがたくさんありすぎて、
三十一文字にはおさまりづらい。

いつものことです(笑)。



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