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がん・ピアサポート活動は私の大切な居場所
私は40代の後半に乳がんを経験しました。母を乳がんで亡くしていたので、いつか罹るかもしれないとは思っていました。
告知を受けた時は、がんであるという実感がわきませんでしたが、治療が進むにつれて、肉体的にも精神的にも辛くなっていきました。
特に抗がん剤治療中は、以前からあったうつの症状が悪化して、精神的に追い詰められていた時期がありました。
何とか無事治療を終え、体力も回復し精神的にも落ち着いてきた頃に、ピアサポート活動との出合いがありました。
ピアサポーターになったきっかけ
定期検診のため病院に行った際に、サロン開催のポスターを見て、何気なく参加しました。
そこでピアサポーターという存在を初めて知り、興味を持ちました。以前から医療に関わる何かをしたいと思っていたからです。
サロンが終わって帰ろうとしている時に、ピアサポーターの方から「また来てくださいね」と声をかけられました。
私のサロンでの発言を聞いて「ピアサポーターに向いている」と思ったということを後になって聞きました。
私もピアサポーターをやってみたいという気持ちになっていましたが、この時は何も告げずに帰りました。
次回のサロンに参加した時に、ピアサポーターになりたいという気持ちを伝えました。
ピアサポーターになるには
ピアというのは仲間という意味です。
患者や家族としてがんを経験した人が、ピアサポーターになる資格を持っています。がん医療の専門家である必要はありません。
年に一度ピアサポーターの養成研修があります。話を聴く心構えや技術(傾聴 : 相手の話に耳だけでなく目や心も傾け、話し手の状況や感情に共感しながら理解し、受け止めるためのコミュニケーション技術)などを学びます。
知識の習得だけでなくロールプレイ(実際の場面や状況を想定して疑似体験を行う学習方法)も行います。
私の場合は、養成研修が終了していたため、少しでも早く活動が始められるようにと、個人的に研修をしてくださいました。
ロールプレイはビデオ撮影し、アドバイスをしていただきました。自分で自分の動画を見るのは少し恥ずかしかったです。
実際にピアサポーターとして活動を希望する場合は、一般参加者としていずれかのサロンを経験し、レポートを提出して研修は終了となります。
研修の方法はピアサポーターが所属する地域や患者会によって異なります。ご紹介したのは私の場合です。
ピアサポート活動について
ピアサポーターができるのは、お話を聴かせていただくこと、自身の経験をお話しすること、がん関連機関とつなぐなどの情報提供です。
医療者ではないので、治療などについてのアドバイスはしてはいけません。
サロンに来られる方の多くは、だれにも話せない、話す場所がないという方々です。
参加者の皆様の話したいことをどれだけ引き出せるかが、ピアサポーターに求められる力量なのですが、難しいですね。
複数名の参加者を想定したサロンでは、ピアサポーター二名が担当するので、お互いの足りない部分を補い合うことができます。
個別で対応する場合はピアサポーターは一名なので、話しやすい雰囲気づくりや声掛けなど、特に難しいと感じています。
自分の限界を感じる場面もあり、ちゃんとできたと思うことは、いままで一度もありません。これから先も、そうでしょう。
参加者の皆様から感謝の言葉をいただいたり、涙を流していた方が笑顔で帰っていかれたり、そんな瞬間ピアサポーターで良かったと思います。
ピアサポーターはサロンでの活動の他に、がん教育の外部講師を務めることもあります。
外部講師をするためには、ピアサポーター養成研修の他に研修を受けなければなりません。
私は研修を受けてはいるのですが、仕事や家庭の事情で、実際に外部講師ができるかどうかは分かりません。
勉強会でピアサポーターとしてのスキルを高め合ったり、交流会で親睦を深めたりする機会もあります。
先日の交流会で家族に関する悩みを話したところ、皆さんさすがピアサポーター、きちんと受け止めてくださり、話して良かったと思えました。
実は、ピアサポーターはボランティアではありません。交通費と賃金をいただいています。
ピアサポーターの対応によっては、参加された方を傷つけたりしてしまう恐れがあります。
とても責任のある活動であるため、それを認識できるようにという意味合いもあるのです。
家庭と仕事とピアサポート活動
私はクリーニング店を営む夫と結婚したので、クリーニング業が仕事になりました。仕事は夫と分担してやっています。
自営業のメリットは、通勤しなくてよいことや一日の時間の使い方に融通が利くことでしょうか。
デメリットは、夫か私どちらかが必ず家に居なくてはならないため外出が制限されることや、仕事とプライベートの境界があいまいなこと。
ピアサポート活動は平日がほとんどのため、活動できる日が限られます。仕事内容が曜日によって決まっているため、活動できない曜日があります。
活動のある日は仕事を済ませてから早めに昼食を用意し、私だけ先に昼食を食べて出かけます。
ピアサポート活動をするようになってから、社会とのつながりが強く感じられるようになりました。
自営業なので、休業日以外はほとんど家に居て、だれかに名字で呼ばれることもない。
ピアサポーターでいる時は、皆さんが私そのものを見てくださっている。
家庭以外に自分の居場所があることが、こんなにも素敵なことだったなんて、ピアサポート活動をしなければ、分からなかったかもしれません。