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【旅メモ お遍路をゆく】 2日目 7~11番札所
朝5時半、特に筋肉痛もなくいつも通り目が覚めた。朝食は6時半から。今日も一体いつ次の宿に着けるのかわからないので、朝食を食べ終わり次第すぐに宿を出るつもりで支度を整えた。さあ出発!
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日本語版より案内が詳しくておすすめ
今日はいずれも山沿いか山中のお寺を巡るため、お昼用におにぎりを買いたいのだけど、安楽寺から見える範囲にコンビニはない。Google Mapで確認する上では途中にコンビニはありそうだけど、お遍路道沿いにはない。体力温存のためあまり離れた場所まで歩きたくないし、お昼前後にご飯が食べられるような場所にちょうど差し掛かるかは更に不明。というわけで本日の一番の悩みは「お昼」(笑) そんな私の必殺技は、登山用のアルファ米おにぎり。これ水を入れるだけでおにぎりになる優れもの。今回4つ持ってきた!
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アルファ米、侮るなかれ
今日の最初のお寺は十楽寺。安楽寺を7:15に出発、途中立派な神社やら甘夏の花に遭遇しながら1キロの道のりを約15分で到着。このお寺の入り口も竜宮城のよう。しかしここにはなんと!これまた(気持ちが)急いでいたから後からわかって超残念だった「治眼疾目救歳地蔵尊」がある。古くから眼病、失明した人たちの治療に霊験があるとされ、眼病に悩むお遍路さんの参詣が多い、のだとか。いやー、なんてこと。めっきり視力の衰えたこの眼の視力回復、お願いしたかったわ~( ;∀;) そんなことも露知らず、まだ人気のない朝のお寺をすがすがしく詣でたのでした。
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一面にクチナシのようなあま~い香りが漂っていました
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光明山 蓮華院 十楽寺
さあ、次の「熊谷寺」へは4キロの道のり。ここら辺から山沿いを歩いてる感が増したお遍路道。途中間違わないように地図を確認するのですが、その姿があまりにも頼りなく見えたのか、信号待ちしていた軽トラのおじいちゃんが「熊谷寺?」と聞いてきた。徳島の人はみな優しい。ああ、おじいちゃん。もう信号が青になってる。しかもその後ろに軽自動車のおばちゃんが待ってる。だけどおじいちゃんは私がわかるまで説明する(笑) おばちゃんも文句も言わず待ってる。ありがと~!!!!!
やってきました、熊谷寺の仁王門。これ、四国随一の規模の県指定重要文化財。くぐっても、まだこの先が長い(笑) 今思えばこのお寺が今回のお遍路の中では一番立派な参道だった気がする。涼しげなグリーンのもみじが風に吹かれてシャラシャラと音のなる参道を本堂まで歩くのだけれど、途中に四国最大最古の立派な多宝塔があってさらにその奥に入口がある。
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ここでの一番の思い出は「地域に根付いたお寺」体験。まだ朝早いので人はいないと思いきや、どうやらご近所のおばあちゃんとおじいちゃんが会話中。耳に入る会話はどうやらどこぞの親戚の集まりの話。おばあちゃんが持っていた手土産を出さない気の利かない嫁の話(に聞こえた)。あるあるよねぇと思いつつ、おばあちゃんの声に張りがあって自分の読み上げる般若心経に集中できない(笑)
その後大師堂に移るも、移動したおじいちゃんを追ってまたおばあちゃんも移動。おばあちゃんのあげるお経はとても美しい響きで年季が入っている。もう少し聞きたいわ~と思ったところでさっきの話の続きを始めるおばあちゃん。今度は跡継ぎの話(笑) おじいちゃんは苦笑いして聞いているけど、これはきっといつも繰り返されている光景に違いない。ああ、朝のお寺はこうやって地域コミュニティを形成しているのだ。
さて次に行かねば。ふむふむ、法輪寺まで2.5キロで約40分。歩きますかーってことで歩き始めたら今度は山沿いを離れて結構な整備された道を歩くことになる。ええー、これってもう大規模開発じゃんってくらいのきれいな舗装道路になっている。これも歴史の移り変わりね。途中、「野沢菜?」と思いきや「葉たばこ」に遭遇する。へぇ~、葉たばこってこんな風に育てられるんだ!と初めて見る光景に感心。なるほどねぇ。
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野沢菜に見えなくもない
法輪寺の思い出は、もみじがきれいな手水場とお地蔵さま。四国霊場で唯一、涅槃像を本尊とするお寺とのことだけれど、大抵の場合本尊を見ることはできない。5年に一度は御開帳しているそうだけど、本当に残念。でも足の病気に霊験があるとされ、本堂に奉納されているわらじの数は見どころです。お守りもあるよ。
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みどころはわらじのお守り
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キレイな手水場でした
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可愛らしいお地蔵さまがいらっしゃいました
さて、次は切幡寺。ここはねぇ、相当山に向かって入っていく感じの道のり。4キロあるから小一時間程度。だんだんお遍路のお参り手順にも慣れてきた頃で本堂、大師堂でそれぞれ5分くらいかかるけど、後は大体時間が読めてきた。切幡寺は本堂にたどり着くまでの階段が肝のよう。現れた333段の階段のあとに更に女厄坂、男厄坂を上りきる。ふぅ~、着いた!
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ありがたく厄払い!
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さてここで時間を見ると11時半。朝早いご飯だった上に山道歩いてもうお昼を食べてもいい感じのお腹のすき具合。なんたって今日最後の藤井寺まで今度は10キロあるからね(笑) ここら辺で炭水化物補充しないと身体がばててしまう~。と思っていたら、古民家の軒下に「甘夏」発見!しかも3個で100円だよ、目が飛び出た(笑)
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そして無農薬です
早速他のお遍路さんと共同購入して1個食べる。う~ん、甘酸っぱい酸味が疲れた体を癒しつつ必要な栄養素を補給している感じが染みわたる~。こんなに美味しい甘夏、いつぶり?もっと買いたいけどお遍路荷物には重すぎる。購入は諦め、ここでいい感じに仕上がっているアルファ米のおにぎりをほおばることにする。体力回復にはここで炭水化物取得が必須。一度シャリばて(登山用語。登山などの長時間の運動の途中で急に筋力が抜け、動けなくなる現象)してしまうと体力回復まで時間がかかるもの。今日のアルファ米選択は大正解。
しかし次の藤井寺までは10キロであることを考え、おにぎりは歩きながら食べた。夕方までには着きたいから気は焦るのよね(笑) お遍路道には途中「遍路小屋」というものが所々に建てられている。これもお接待とされ、地域の方々が常に整備してお遍路さんが休憩所や宿泊場所として使えるようになっている。なんともありがたい施設。
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藤井寺までは、日本最大と言われる川の中州(川中島)を通ることになる。見渡す限りの農地となっていて葱やキャベツの花が咲く。ここでも親切なおじちゃんがいて、この辺りの地図を手渡しながら、昔はこの中洲にも家があって人が住んでいた歴史を話してくれた。今はもう農地のみとなって人は外から通うだけとなったのだとか。この川中島へは3本の潜水橋で渡る。
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私を中州へといざなう
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これが川の中州?と思うほど整備されている
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ちょっとした心遣いが嬉しい
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この潜水橋が細いのに、軽トラがかなりのスピードで普通に走るのが怖い。これが日常の風景なのだろう。お遍路さんしか歩く人なんてきっといないもの(笑)
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川の水が増すと沈むことが前提だから作りがシンプル
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頼りない作りにも見えなくもない
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こうなるとアート、美しい
中州を渡りきると、今後は別の親切なおじさんが待っていて、これまたお接待の杖を勧めてくれた。その見た目が七福神の布袋様のお腹のようなところから「布袋竹」と呼ばれる竹を使った杖。無料で提供されているけれど、なんとも握り心地が良い。地域のお遍路さんへのサポートは根っから根付いているんだなぁと深く感じた出来事でした。金剛杖は買わなかった私も、これならいいかも、と1本ありがたく頂きました。
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グリップの箇所がちょうど人の手にぴったりハマる
さあ着きました、本日最後の藤井寺。ここでの見どころは雲竜の天井画と遍路ころがしなのに、そう、ここでも見そびれた雲竜の天井画~( ;∀;) ああ、やっぱり1番から全部やり直したい~(笑)
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小雨のせいか、静かでひっそりと佇む感が増していた
明日はこの藤井寺敷地奥から伸びるこの山道をいく。ここが遍路ころがしと呼ばれる最大の難所らしい。お遍路リピーターの方々もここが一番きついという。ここから次の12番札所である焼山寺まで山道13キロ、峠を3つ超えることになる。超えられるのか、私?
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藤井寺から歩くこと10分。今日のお宿は旅館吉野。着いた順からお風呂に入れて頂き、ランドリーを回した。お風呂が家族風呂仕様なのか、3人くらい浸かれそうな大~きな浴槽。藤井寺少し前あたりから小雨となり、体がちょっと冷えていたからたっぷりの湯舟が本当に心地よい。あー、いいな、お風呂って。日本人で良かった。
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バス・トイレは共同だけど洗面はあるし
明るくて居心地がとても良かった
旅館吉野は部屋もキレイで新しい、ランドリーも1階と2階にあって使いやすい、有料冷蔵庫には飲み物もお菓子も入ってる、そしてなんと言ってもご飯が美味しい。お夕飯も朝飯もとても素晴らしかった。夕飯メインのとんかつはもちろん、いちいちの小鉢料理が本当に旨すぎる!郷土料理であるそうめんのお澄ましも最高。私、ここの味付けがきっと好きなのね。
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このとんかつで体力復活!小鉢の多さが嬉しい
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卵アレルギーなんだけど、このくらいなら大丈夫
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次に藤井寺に来る時があれば(2巡目あるのか!?)宿は絶対ここにする!居心地よすぎてもう1泊したかったくらいです。そんな2日目でした。