たぶん分かり易い!気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書の超要約版(2) 第5次評価報告書科学的根拠の結論
【科学的根拠(第一作業部会)の結論】*作業部会は3つあります(後述)
温暖化には疑う余地は無い。20世期半ば以降の温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い。
【解説】
「温暖化には疑う余地は無い。」とは、気温の上昇に加え、降水量の増加(特に北半球中緯度の陸域)、海洋の温度上昇(特に表層)、氷河の縮小等、気温上昇の証拠となる観測結果が揃っているということです。
「20世期半ば以降の温暖化」とは、具体的に言うと1951年〜2012年の間に世界の平均気温が約0.7℃上昇している、というデータが示されています。
「温暖化の主な要因は、人間の影響」とは、気温上昇の要因を人の活動によるもの(化石燃料の消費、森林破壊等)と自然起源(太陽放射照度の変化)とに分けて各種観測データを評価したところ、ほとんどが人の活動によるものであった(少しは自然起源もあります)ということです。太陽放射照度(地球に入射する太陽エネルギーの強さ)は、太陽活動・地球の地軸・公転軌道の変動要因を合わせた結果として見ていると思います。
「可能性が極めて高い」とは、評価報告書作成の約束事として定義された10段階の可能性の表現の一つ(下記【参考】参照)で可能性が高い方から2番めの「95%以上の確率で確からしい」というレベルです。このレベルは、①専門家間の見解の一致度が高く、②証拠の種類、量、質、整合性が確実である、という評価で信頼度が高いとされています。
(補足)気温の測定誤差に関して問題提起をしている研究者もいます。気温の測定環境は、周囲に障害物が無い風通しの良い場所、芝生の上1.25〜2m等の規定があります。ところが実際には建物のすぐ横、エアコン室外機の横、駐車場の隣り等で測定している事例が数多くあるそうです。日本でも、暑い町として有名であった群馬県館林市の測定環境に問題がある(すぐ側に駐車場、アスファルト道路があり、地面は芝生でなく防草シートであった)と話題になったことがありました。2018年6月に測定地である消防署の移転に伴い、測定地を近くの館林高校(測定環境良好)へ移しました。その際、気象庁で7〜9月の3か月間、両方の測定値の比較を行いました。その結果、新測定地の方が旧測定地よりも測定値が低いことが確認されました。以前の気温は実際よりも高めになっていたということです。気象庁の発表では、「全期間を平均すると平均気温で0.2℃、最高気温で0.4℃、最低気温で0.1℃新観測所の方が低かった」となっています。8月の最高気温は新旧で0.9℃も差がありました。この事例や測定点の偏在によりIPCCの示している温度上昇はやや過剰ではないかと、私は感じています。次回に述べますが、1998年以降の気温上昇の傾きが小さくなっているという事実も気になります。
【参考】可能性の表現(上位4つ)
①ほぼ確実=99〜100%の確率、②可能性が極めて高い=95〜100%
③可能性が非常に高い=90〜100%、④可能性が高い=66〜100%
【次回以降の内容】
上記の結論に至った科学的根拠としての種々の観測結果、将来の気温・環境への影響予測等を次回以降に述べます(内容下記)。
1.観測事実
気温上昇の影響、降水量の状況、海の状況、雪氷圏の状況、二酸化炭素濃度の状況、極端現象
2.気候変動の要因
太陽放射、温室効果ガス、大気中のエアロゾル、火山噴火、人為起源
3.将来予測
シナリオ、気温予測、降水予測、海の予測、雪氷圏の予測、極端現象予測、炭素循環の変化、気候の安定化、
ここまでが、第一作業部会(科学的根拠)「気候システム及び気候変化についての評価を行う」の内容です。
この後に、第二作業部会(影響、適応、脆弱性)「生態系、社会、経済等の各分野における影響及び適応策についての評価を行う」、第三作業部会(緩和策)「気候変化に対する対策(緩和策)についての評価を行う」、インベントリータスクフォース「各国における温室効果ガス排出量・吸収量の目録(インベントリ)策定のための方法論の作成・改善を行う」と続きますが、どこまでやるかはまだ検討中です。
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