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たぶん分かり易い!気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書の超要約版(8)将来予測(気温、降水)

【報告書の要点】は報告書記載内容から重要な文章をそのまま引用。【解説】は報告書に記載されている内容を用いて要点を解説。【補足】は報告書以外の情報も含めて私が必要と思う情報を記載。


【報告書の要点】

2081年〜2100年の世界平均地上気温の1986年〜2005年平均に対する上昇量は、RCP2.6シナリオでは0.3〜1.7℃、RCP4.5シナリオでは1.1〜2.6℃、RCP6.5シナリオでは1.4〜3.1℃、RCP8.5シナリオでは2.6〜4.8℃の範囲に入る可能性が高いと予測される。

地域的な例外はあるかもしれないが、湿潤地域と乾燥地域、湿潤な季節と乾燥した季節での降水量の差が増大する。

世界平均地上気温が上昇するにつれて、中緯度の陸地のほとんどと湿潤な熱帯域において、今世紀末までに極端な降水がより強く、より頻繁になる可能性が非常に強い。

【解説】

RCPシナリオ(代表濃度経路シナリオ)とは、将来予測のための放射強制力の代表的な経路(今後の温室効果ガス排出量の推移)のことで複数のシナリオが用意されています。数値は放射強制力(W/m2)で、数値が大きいほど温室効果ガス排出量が多く(温室効果ガス濃度が高く)、その結果である放射強制力(温室効果の増大量)が大きいことを示します。

RCP2.6=低位安定化シナリオ(IPCCが目標としているシナリオ)、RCP4.5=中位安定化シナリオ、RCP6.5=高位安定化シナリオ、RCP8.5=高位参照シナリオ(対策をしないシナリオ)

降水量は、高緯度域と太平洋赤道域が増加し、中緯度と亜熱帯の乾燥地帯が減少し、両者の差が大きくなるとされています。一方で中緯度の湿潤域は今世紀末までに降水量が増加する可能性が高いとされています。また、湿潤な地域で極端な降水がより強く頻繁になる可能性が非常に高いとされています。

【補足】

最も温室効果ガス排出量が多いRCP8.5は世界が排出削減策を全く行わない場合です。RCP2.6は徹底した対策を行い、2020年頃から世界全体の温室効果ガス排出量を削減させ2070年頃に排出量を実質ゼロにする場合です。RCP4.5とRCP6.5は温室効果ガス排出削減策を実施する場合のシナリオで、RCP4.5は2050年頃、RCP6.5は2080年頃から温室効果ガス排出量が減少するケースです(排出量の実質ゼロまでは減らないシナリオ)。

地球に入射する太陽の放射量が340W/m2ですから、何も対策しない場合のRCP8.5の放射強制力(8.5W/m2)は太陽放射の2.5%に相当します。地表に届く放射エネルギーが2.5%増加すると、当然、気温も海水温も上がるということです。

北極海は世界平均よりも早く温暖化し、陸上における平均的な温暖化は海上よりも大きくなるとされています(非常に高い確信度=証拠の確実性、見解一致度とも高い)。

地上気温1℃の上昇に対しておよそ1〜3%の割合で降水量は増加するとされていますが、もともと降水量の多いところで増加し、少ないところで減少すると予測されています。

次回は、将来の海の予測(海面推移、酸性化)、雪氷圏の予測です。

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