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たぶん分かり易い!気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書の超要約版(5)観測事実(降水・雪氷圏の状況)

【報告書の要点】は報告書記載内容から重要な文章をそのまま引用。【解説】は報告書に記載されている内容を用いて要点を解説。【補足】は報告書以外の情報も含めて私が必要と思う情報を記載。


【降水の状況に関する報告書の要点】

北半球中緯度の陸域平均では、降水量が1901年以降増加している(1951年以降は高い確信度)。

【降水の状況の解説】

北半球中緯度の降水量は全体としては増えていますが、増えている地域と減っている地域がみられます。1951年〜2010年の期間で変動割合の大きい地域の変動率は、増加地域=+5〜+10mm/10年、減少地域=-10〜-25mm/10年程度です。

「高い確信度」とは、①見解一致度は中程度だが証拠は確実、または②証拠は中程度だが見解一致度は高い、のどちらかのレベルです。

【雪氷圏の状況に関する報告書の要点】

過去20年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床は減少しており、氷河はほぼ世界中で減少し続けている。

北極海の海氷及び北半球の春季の積雪面積は減少し続けている。

永久凍土の温度が1980年代初頭以降、ほとんどの地域で上昇していることの確信度は高い。

【雪氷圏の状況の解説】

氷床面積の減少率は、南極域に比べ北極域(グリーンランド)の方が大きく、1979年〜2012年の年平均氷床面積の10年あたり減少率は、北極圏=3.5〜4.1%、南極圏=1.2〜1.8%というデータが示されています。

1979年〜2012年において北半球の積雪面積の10年あたりの減少率は、3月・4月平均=1.6%[0.8〜2.4%]、6月=11.7%[8.8〜14.6%]というデータが示されています。[ ]内の数値は90%信頼区間

1971年代から2010年にロシア北部で気温が2℃上昇したというデータがあり、地球平均に比べ高い気温上昇となっています。

【補足】

日本の降水量は北海道と西日本、四国、九州が10〜25mm/10年の減少で、その他の地域はほぼ変化無しですが、傾向として降水量の多い年と少ない年の変動幅が大きくなってきているようです。

福岡県の年間降水量は1800mm前後で、仮に降水量の減少率が20mm/10年であるとすると50年間で-100mmとなります。2010年〜2019年の福岡県の年間降水量を見てみると1319mm〜2421mmと幅が広いので、降水量の減少は実感できないレベルのように思います。九州は夏場の大雨の印象が強く、温暖化で降水量は増えていると思っていましたが、年間を通してみるとそうではないようです。

南極圏の方が北極圏に比べ氷床面積の減少率が小さいのは、1年を通して南極の方が気温が低いからです。北極は温度の下がり難い海洋の面積割合が高いため、氷の山の南極に比べ気温が高くなるようです。

報告書に「2012年7月にはグリーンランド氷床表面の全面融解が観測された」との記載がありますが、これは氷床が融解して無くなったということではなく、氷床の表面が湿った状態になったということです。

氷床、積雪面積が減少すると地球のエネルギー収支が変化します。氷床、積雪面は太陽放射を反射し、太陽からの入射エネルギーを減らす役割をしています。従って、氷床、積雪面積の減少は気温の上昇をもたらすと思われます。尚、太陽放射の30%は反射されており、大部分は雲が反射しています。全反射量のうち72%が雲で、28%が地表(含海面)で反射されますが、地表反射の一部が氷床と積雪面での反射です。

次回は、二酸化炭素濃度の状況です。

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