【SS】ねえ、ロミオ、私はシンデレラになりたいの
昔、むかし。いや、現在。
小さいころからからいがみ合う二人の男女がいた。
二人は、家が何やら複雑で、言わば商売敵なのである。
それは、幼い彼らでもわかるようないがみ合いのある家庭環境だったので、その家の一人息子である未央(みお)とその商売敵の家の一人娘の樹理(じゅり)は仲を悪くするほかなかった。
しかしながら、彼らはいがみ合っていくうちに、だんだんお互いを知って、惹かれあう。
高校の裏庭。
二人の逢瀬の場所。
「ねぇ、未央」
「なに?」
「私はさ、ジュリエットになりたいわけじゃないのよ」
「……じゃあ、俺じゃだめだね」
「……でも、それじゃ、悲劇になるの」
貴方じゃなきゃダメなのよ、と膝を抱える樹理の肩を、未央は優しく抱き寄せた。
(ねぇ、ロミオ)
(なんだい、シンデレラ)
(一緒に此処から逃避行してくれる?)
(お姫様の仰せのままに)
―END―