五穀豊穣とおはぎと命日と
11月23日は「勤労感謝の日」で祝日。
会社を辞めて10年以上経つと曜日感覚がバグり始めます。さらに夫婦2人暮らしだと時間感覚も世間一般と微妙にズレてたりするので、平日(←だと私が勝手に勘違いしてる)の朝、まったく出社する気配のない夫を見てはじめて「あれ?今日なにかの祝日でしたっけ??」みたいなことがたまに起こります。11年前の11月23日もまさにそんな感じで、ソファで犬とくつろぐ夫の姿に「あ!今日は勤労感謝の日か!」と気づくと同時に「ところで、勤労感謝の日って何?」「誰に感謝すればいいの?夫??」と頭が謎のループに突入し始めました。
そんな時は迷わずGoogle先生に質問を。(なんて便利な世の中!)
Google先生によると「その年の収穫に感謝して新穀を神様にお供えし来年の豊穣を願う皇室行事である新嘗祭が戦後に転用され、今日の勤労感謝の日になった」とのこと。
そもそも「新嘗祭」とは、旧暦11月の2番目の卯の日に天皇陛下が新穀の収穫を神々に感謝し、自らも新穀を食べる宮中行事の中で最も古い祭祀であり、「新嘗祭」から「勤労感謝の日」に名称が変わった現代も11月23日になると天皇陛下は着替えるだけでも数十分かかる重い御祭服を身につけ、暖房もない神嘉殿で正座で2時間ひたすら感謝の祈りを捧げ、さらにこの新嘗祭が終わるまで天皇陛下は決して新米を口にしないという驚愕の事実を知ることに。
新嘗祭のなんたるかも知らず、祝日や新米に浮かれる私たち庶民をよそにご高齢の天皇陛下が人知れず国民のために何時間も祈り続けているという事実を知り、11年前のその日、私は自分の無知を深く深く恥じました。せめて自分にもなにかできることはないかしら?と数分悩んで、急遽その年に収穫できたもち米と小豆と大豆を使って「なんとなく五穀豊穣っぽいから!」という安易な理由でおはぎをつくることにしました。11年前、初めて作ったおはぎは「あんこ」と「きな粉」の2種類。翌年から「五穀豊穣」にちなんで5種類を目標に「おはぎ作り@新嘗祭」は私の恒例行事となり、その年の収穫物によって毎年変化しながらも少しずつ種類が増え、12年目となる今年のおはぎは6種類。
ひょんなことから始まったこのおはぎ作りは、私なりの五穀豊穣への感謝であり、その年の収穫物の集大成。まぁるいおはぎをみてると自然と「今年も色々収穫できました。ありがとうございます。」という気持ちになるから不思議です。少し手間がかかるおはぎ作りだけど、ずっと続けてきてよかったなと思える私にとって本当に大切な恒例行事です。
そんな毎年恒例のおはぎ作りを1度だけ中断したことがことがあります。
それは、忘れもしない2019年11月23日、先住犬の命日。
東京から田舎に引っ越してから8年、病気やケガで病院にお世話になることもなく、亡くなる前日まで散歩もトイレも自分の足で行き、最期は本当に眠るように息を引き取りました。1日たりとも寝たきりになることもなく、健康寿命と本来の寿命のギャップゼロの完璧なまでの老衰死は、悲しさよりうっかり感動してしまうほど美しいものでした。生き方も逝き方も最高にカッコいい15年の人生(犬生)でした。(人間の私も見習いたい!)
昔、友人が「実家の犬が母親(←そのワンコが大好きだった飼い主さん)の誕生日に亡くなった」という話のあとに「犬は、飼い主に忘れられないようにその人にとって特別な日を選んで亡くなるんだよ。」という話をしてたけど、本当にその通りになりました。毎年おはぎとつくる度に私は彼女を思い出し、おはぎを作り続ける限り一生彼女を忘れることはないでしょう。イヌは偉大です。
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