池袋、日曜14時、遺体を踏んだ
日曜日の池袋、14時。
JR池袋駅から雑踏を抜けたサンシャイン60。
久しぶりに訪れた。
20年ぶりだろうか。いや、もっとか。
その頃の記憶はもうないし、街も変わっただろうから新鮮味があった。
ただひとつを除いては。
街は混んでいるが、中ではなく外から眺めるとビル、ホテル、公園へと続く。その遊歩道を歩く。
まず感じるのは臭い。
エリア一帯が、他の区画とは違った臭いを感じる。
この臭いは、知っている。アマリリスのような甘さの中に人体が腐敗して溶けたアンモニアの臭い。きっとわたしがドラキュラだったら甘美な血の匂いと表現したかもしれない。
土地に染み付いた念の臭い。きっと満月の頃とか、月がリリスを通過する時に一際濃くなる、臭い。
空気はまったく違う。
空気という表現は、まるでわたしたちの身長程のゾーンを指すかもしれないので厳密に言うと、地面数十センチ程が重い。
グラデーション的に徐々に重みは感じにくくはなるものの、膝から下はかなりの重圧だ。
例えるなら硫黄が噴出する山の硫黄濃度。決してしゃがみ込んではいけない。
歩道を歩き、また駅へと向かう最中。
左足を引っ張られるという事態が2度起きる。明らかにアスファルトではない何かを踏みつける感覚。
ああ、きっと遺体だ。
ここには無数の死体があるのだ。
左足に痛みも伴う。
交番あたりで臭いも空気も痛みもピークに達する。
わたしは比較的色で見えやすい性質だ。池袋駅は青だったのに、ここの地面は血の色なのだ。地べたを覗き込んではいけない。
あの立体駐車場の地下はもっと濃度が濃いのだろうか。まあしかし、思念なのでそこに留まることしかできないだろう。池袋駅構内ではその思念は消えていた。あの区画だけが妙なのだ。
ただ不思議な話であるが、そのようにあまりよくないものがいるからこそ、池袋は強いパワーがあると思われる。
そこにあるものをわざわざ祓ったり、ちょっかいを出すものではない。そこにあることは摂理のようだ。
もちろんそんなものは、霊媒でなければ感じることはできないので無害だ。
ひとつふたつではない多くの念は、昔のその場所の歴史を物語るものだろう。
ここには書かないが壮絶な歴史があるようだ。気になる人は調べてみてほしい。
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