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MAD LIFE 328
22.歯車は壊れた(9)
5(承前)
「あなた……」
由利子が口を開く。
「俊が見つけちまったんだよ。あの封筒を……」
洋樹はため息まじりに説明した。
「母さん、教えて」
動揺する母の姿に戸惑いながらも、俊は尋ねた。
「友恵っていうのは誰?」
由利子は助けを求めるように洋樹の顔を見た。
「もう隠せそうにない。正直に話そう」
「でも……」
由利子の不安げな表情。
「いつかはわかることだ」
洋樹は吐息を漏らすと、俊のほうを向いた。
「俊。この話を聞けば、おまえはきっとショックを受ける。それでも聞きたいか?」
父の問いに、俊はこくりと頷いた。
「よし。じゃあ、教えてやろう」
洋樹は覚悟を決め、次の言葉を発した。
「友恵は……おまえの姉さんだ」
「……姉さん? 俺の?」
「封筒の中に赤ん坊の写真が入っていただろう? あれが友恵だ」
「……姉さんは死んだの?」
「いや」
洋樹は首を横に振った。
「おそらく生きているはずだ」
「だったら……その子は今、どこにいるの?」
(1986年7月6日執筆)
つづく
1行日記
本日、鈴鹿で水泳の記録会――背200、2分30秒を切れるか?