
逆転裁判 小説版未発表プロット14
逆転の道標(14)
《登場人物》
▼グリーンモンスター……5人組お笑いユニット。全員が怪物に扮し、どたばたコントを演じる。舞台を中心に活躍。全国各地を忙しく駆け回っており、デビューわずか1年で観客動員数50万人を突破。昨年までメンバーそれぞれが、まったく異なる職業に就いていたことも話題となっている。イメージカラーは緑。
〈メンバー〉
・モンスターキング……元スタントマン、鷲鼻を緑色にペイント、炎恐怖症、被害者
・モンスタークイーン……元モデル、美女、右目の周りを緑色にペイント、高所恐怖症、被告人
・ドラキュラ……元医師、前歯を緑色にペイント、赤いコンタクトレンズを装着、得意芸はインチキ催眠術
・ウルフマン……元ギタリスト、聴力抜群、大きな耳を緑色にペイント、得意芸は爪楽器(つけ爪をこすり合わせて音楽を奏でる)
・フランケン……元レスラー、巨体、怪力、頭髪が緑色、ハムスター好き、得意芸はハムスターとのダンス
▼鈴木香菜恵……「逆転の架け橋」に登場、女子大生
▼矢田吹……「逆転の架け橋」に登場、やたぶき屋店主
7
証言台に立つドラキュラ。
〈裁判長〉「大丈夫ですか? 目がウサギみたいに真っ赤ですけど」
〈ドラキュラ〉「畜生と一緒にするでない。吾が輩は偉大なるドラキュラ伯爵だぞ」
〈裁判長〉「……はあ。もしかして、寝不足ですか?」
〈ドラキュラ〉「違う!」[赤い瞳を指差し]「これはファッションだ! コンタクトレンズだよ!」
〈真宵〉「ドラキュラさんは、あの赤い瞳と大きな前歯がトレードマークなんだよ」
〈御剣〉「では、ドラキュラ。キミが見たことについて正直に話したまえ」
〈ドラキュラ〉「いいだろう。……ミーティングが終わってナイトの部屋を退散するとき、吾輩、偶然にも見てしまったのだよ」[クイーンのほうを見て]「クイーン、貴様がドアのそばへスプーンを落とすところをな」
〈成歩堂〉「……スプーン?」
〈ドラキュラ〉「おそらく、ルームサービスのコーヒーについていたものだろう。クイーンはスプーンを、ドアの近くにそっと置いたのだ。どうして、そんなことをするのか、そのときはよくわからなかったのだが……」
〈御剣〉「わかったか、成歩堂。しょせん密室なんて、フィクションの中だけの幻想だ。現実はこんなもの。スプーンがドアの隙間に引っ掛かれば、ドアは完全に閉まらず、ロックされない。被告人はそのような細工を施したうえで、犯行に及んだのだろう」
〈成歩堂〉「うう……」
〈御剣〉「被告人は泥酔した被害者を引きずって、非常口へと向かった。被害者は途中で目を覚ましたが、酒で頭が朦朧としており、ほとんど抵抗できなかったに違いない。『助けてくれ! 死にたくない!』と叫ぶのが精いっぱい。そのままなすすべもなく、突き落されてしまったのだろうな」
〈成歩堂〉「すべて憶測です。証拠はなにもありません」
〈御剣〉[にやりと笑い]「果たして、そうかな?」
〈成歩堂〉「……え?」
〈御剣〉[スプーンを取り出し]「これがなにがわかるか?」
〈成歩堂〉「…………」
〈御剣〉「パーティールームの隅に落ちているのを鑑識が発見した。ホテルで使用しているコーヒー用のスプーンだ。よく見てみろ。スプーンの柄がわずかに折れ曲がっているだろう? 被害者の部屋へ忍び込んだときに回収し、誰にも見つからぬよう隠したつもりだったのだろうが……」[クイーンを見て]「警察を甘く見てもらっては困るな」
〈成歩堂〉「異議あり! スプーンの柄が曲がっている――ただそれだけの理由で、ドアに挟むために使われたと断言することはできません」
〈御剣〉「スプーンの柄からは、スイートルームのドアと同じ成分の塗料が発見された」
〈成歩堂〉「うっ……」
〈裁判長〉「どうやら、真実が明らかになったようですな」
絶体絶命のピンチ。
〈真宵〉「なるほどくん、どうするの?」
〈成歩堂〉(VIPエリアへの侵入は絶対にできない。クイーンさん以外の人物に犯行は不可能なように思える。……だけど、本当にそうなのか? 落ち着け、成歩堂。発想を逆転させるんだ。クイーンさんが犯人でないとしたら、あとはキングさんが自らの意思で飛び降りたとしか考えられない。そうだ――突き落とされたのではなく、飛び降りたのだとしたら? 犯人に操られたのであれば……。事件直前にかかってきた電話……もしかしたら、あれが……)
パーティールームを撮影した写真に目をやり、真相を突き止める成歩堂。
〈成歩堂〉(そうか、わかったぞ!)
〈御剣〉「では裁判長。そろそろ判決を」
〈成歩堂〉[人差し指を突きつけ]「異議あり!」
つづく