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MAD LIFE 357
24.それぞれの行動(8)
4(承前)
「……話?」
洋樹は訊き返した。
瞳の顔は怖いくらいに真剣だ。
「私……俊君に写真を見せてもらいました」
瞳は真顔を崩さずにいう。
「え――」
洋樹は動揺を隠しきれなかった。
「おじさんが十六年前にやむを得ず手放した友恵という名前の赤ん坊の写真です」
いつもと違い、他人行儀な言葉遣い。
瞳は一枚の写真を取り出し、洋樹の前に差し出す。
そこには赤ん坊の頃の友恵が写っていた。
「友恵……」
「いいえ。それは赤ちゃんだった頃の私です」
もはや疑う余地などなかった。
瞳は友恵なのだ。
この写真。
そして、
「そのペンダント……」
洋樹はかすれた声を漏らした。
「瞳……おまえが今、首にかけているペンダントは、由利子が大切にしていたものだ。由利子はせめてもの罪滅ぼしにと、母親の形見であるペンダントを赤ん坊のおまえのそばに残して……」
洋樹は瞳の首に手を伸ばし、ペンダントに触れた。
「このペンダントは中にものが入るようになっていてな……」
そう説明しながらペンダントのふたを開ける。
(1986年8月4日執筆)
つづく
1行日記
突然ですが、8月26日まで執筆延期決定!