MAD LIFE 356
24.それぞれの行動(7)
3(承前)
「そうだ! こんなところで話し込んでなんていられないんだよ!」
洋樹が叫ぶ。
「社長の娘が誘拐された」
「……え?」
とっさには事の重大さを呑み込むことができなかった。
「誘拐?」
「ああ」
中西は愕然とした。
真知が誘拐された?
まさか、そんな。
「どういうことですか?」
冷静でいられるわけがない。
洋樹の肩をつかんで激しく前後に揺する。
「俺も詳しいことはよくわからない。だから、今から社長のところへ――」
「俺も行きます!」
そう叫ぶや否や、中西は走り出していた。
「お、おい。待てって」
洋樹の声が背後から聞こえたが待ってなんていられない。
――午後十時。
4
洋樹と中西が浩次、江利子、瞳の三人と顔を合わせたのは小崎邸の前だった。
「……瞳」
瞳の顔を見て、洋樹は動揺した。
彼女は本当に友恵なのだろうか?
「あ――」
瞳の首にかかったペンダントが目に入る。
そのペンダントには見覚えがあった。
「……おじさん」
瞳が口を開く。
「私……おじさんに話があります……」
(1986年8月3日執筆)
つづく