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MAD LIFE 267
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(11)
2(承前)
「間瀬!」
金井は車を停車させると、すぐに外へ飛び出した。
目の前の光景に絶句する。
道路の真ん中には浩次が血まみれになって倒れていた。
3(終章へのプロローグ)
「瞳……」
東京へ向から列車の中。
晃は瞳に声をかけたものの、そのあとに続ける言葉が見つからず困っていた。
「私……馬鹿よね.」
俯いたまま、瞳がぼそりという。
「あなたのお父さんがお兄さんを強請っていると知って、私はあなたのことをひどく責めた。口汚く罵った。でも、責められなくちゃいけないのは私のほうだったんだよね」
「違う……違うよ、瞳」
「あなたのお父さんを殺した人と同じ血が、私には流れている。私が憎いでしょう?」
「馬鹿なことをいうな!」
晃は思わず席を立ち、人目を気にせず大声をあげた。
「君を恨んだりするわけないだろう?」
「真実を映す鏡があればいいのにね」
唐突に瞳がいう。
「どういうこと?」
「あなたの本当の心がわかるから」
晃は唇を噛み、力強く頷いた。
「ああ、本当にそうだ。真実を映す鏡があれば、俺の気持ちをちゃんと君にわかってもらえるのに」
瞳はなにも答えない。
沈黙を引き連れて、列車は東京へと走り続けた。
(1986年5月6日執筆)
つづく
この日の1行日記はナシ