見出し画像

逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本09

燃え盛る逆転(9)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
X鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手、大学構内で遺体が発見される
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手、深夜3時にボヤを見つけて消火活動
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長

▼シーン10(続き)

〈目樽〉「あなたもよくご存知の、我が学園のスターアスリートたちのものです」[その中の1つを指差し]「これは河童沙良がアジアカップで日本記録を出したときの楯」[別の1つを指差し]「こっちは智槍啓太がジャパンカップで優勝したときのトロフィーだ」
〈御剣〉[筋肉男をかたどったトロフィーを手に取り]「これは大地クンが筋肉バトルで獲得したものだな」
〈目樽〉[心配そうに]「大切な品だから、くれぐれも慎重に扱ってくれたまえ」

 御剣の視線が右端の楯に注がれる。

〈目樽〉[御剣の視線に気づき]「ああ。それは亡くなった鞍馬満天のものだ」[寂しそうな表情で楯を撫でながら]「まさか、これが最後になってしまうとはな。彼ならきっと世界大会でもメダルを獲得してくれると期待していたのだが……本当に残念だ」

 学長の話を聞いているのかいないのか、御剣は少し離れた場所で、別のトロフィーを眺めている。

〈目樽〉「ほかになにか、興味深いものでも見つかったかね?」
〈御剣〉[楯に刻まれた文字を見て]「智槍クンは競輪選手だとばかりと思っていたが、トライアスロンもやるのだな」
〈目樽〉「ああ。……いや、正確にはトライアスロンの選手だったと過去形で語るべきだろう」
〈御剣〉「どういうことだ?」
〈目樽〉「彼は一年ほど前、海難事故に遭ってね……そのときの精神的ショックから水を怖がるようになり、トライアスロンから足を洗わざるを得なくなったんだ」
〈御剣〉「それは気の毒に……」
〈目樽〉「だが智槍啓太は悲劇を乗り越えて競輪選手へ転向を遂げ、再び第一線へと戻ってきた。感動のエピソードだよ」

 御剣、目樽の話を聞いているのかいないのか、手にしたメモと飾られたトロフィーを交互に眺めている。

〈目樽〉「……なにをやっているのかね? その紙切れはなんだ?」
〈御剣〉「これか? 過去に起こった放火事件の記録だが」
〈目樽〉[機嫌を悪くして]「なぜ、そんなものをこの場で広げる?」
〈御剣〉「確認だ。放火が起こった日に試合に出場していた者は、連続放火魔ではないと判断できるからな」[トロフィーや楯の日付と照らし合わせ]「ほら、河童クンも智槍クンもシロだ」

                           つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?