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フォスター・チルドレン 37
第4章 最後まで理解し合えなかったね(1)
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親父が失踪して大騒ぎとなった日から、四日が過ぎた。
水曜日。この日は朝から、空砲のような爆音が何度も響き渡り、そのたびに僕は飛び上がって驚かなければならなかった。
新聞に織りこまれていた広告で、今日が年に一度の花火大会であることを知る。打ち上げの準備をしているのだろう。
この町の花火大会を最後に見たのは一体、いつのことだっただろうか?
大学時代はこの町を離れていたし、就職してからは仕事に追われて、花火など見ている暇はなかった。最後に見たのは高校三年生のとき――確かライブの帰り道だった。隣には朋美がいた。ちょうど七年前の話だ。
毎年、花火大会は午後七時に始まる。あとになるほど花火の仕掛けは大がかりとなり、八時五十五分に華やかなフィナーレを迎える。遠くからこの花火を見に来た人は、これで終わりかと席を立つ。だが地元の人間は動かない。九時ちょうどに本当のラストを飾る花火が一発打ち上がることを知っているからだ。
九時ジャストに打ち上がるたった一発の大きな花火――それがこの町の花火大会のメインだった。ラストの花火が消えたあと、町の人は町歌を大声で歌う。そのあとは宴会だ。花火大会は祭りのないこの町の一大イベントでもあった。
僕も朋美と一緒に九時ちょうどの花火を見上げ、そして二人で大声で町歌を歌った。あれ以来、花火大会には参加していない。
今夜は七年ぶりに町歌を口ずさむことができるかもしれない。僕は町歌の出だしを口ずさんでみた。忘れてしまっているのではないかと思ったが、小さい頃に刻みこまれた記憶は容易には消えないものらしく、二番まで完璧に歌うことができた。
朝飯と昼飯を合わせた食事をとっていると、玄関の扉がノックされた。僕を訪ねてくる人間など、そうはいない。公共料金の集金だろうと思い、ぼさぼさの頭のままでドアを開ける。
「あの……先日は申し訳ありませんでした」
扉の前には先週、ガソリンスタンドで会った女の子――ショーコが立っていた。作業着姿でない彼女は、本当にアイドル歌手と見間違えるほど可愛かった。
「……お怪我のほうは大丈夫ですか?」
心配そうに、僕の顔を見る。
「いや、もう全然、平気です」
僕は左の頬をさすりながら笑った。腫れはすっかりひいたが、実際にはまだかなり痛みが残っている。
「本当にごめんなさい。うちのせいで、あんなことに巻きこんでしまって……」
「もうつきまとわれてない?」
彼女に尋ねた。あの事件のあと、僕は店長に住所と名前を述べ、すぐにその場を立ち去った。ひょっとしたら警察が事情徴集に来るかもしれないと思ったが、今のところ音沙汰はない。新聞にも載らなかったので、どうやら内々で処理されたようだ。
「ええ。あそこまでこてんぱんにやられてしまっては、近づいてくる勇気もあらへんみたいです。しょせん粋がっているだけのちんぴらで、復讐を考えるような勇気も持ってない奴らですから……」
つづく