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MAD LIFE 171
12.危険な侵入(4)
2(承前)
丸買証券の社長の息子?
瞳の兄――浩次が三年前に殺した内村展章は丸買証券の会長だった。
〈フェザータッチオペレーション〉と浩次はやはりどこかで繋がっている。
洋樹は目を閉じ、頭の中を整理しようと努力した。
内村を殺すよう浩次に命じたのは長崎だ。
その任務はもともと、立澤が長崎に命じたものだった。
立澤組……フェザータッチオペレーション……暴力団……
記憶の断片が少しずつ繋がり始める。
しかし、パズルの完成はまだ程遠かった。
記憶の断片。
三歳の私。
瞳はときどき思い出す。
その日、私といっしょに自宅にいたのは、両親でもなく、兄でもない誰か。
その人の腕には蛇が貼りついていた。
襲いかかる蛇。
うつろな目。
床に転がった注射器。
――瞳、大きくなったな。もう三歳か。
ろれつの回らない口調。
恐怖。
殺される、殺される、殺される。
白い粉。
注射器。
助けて!
悲鳴をあげると同時に、玄関のドアが開いた。
――なにをするんだ!
と父。
――あんた、なにしに帰ってきたんだよ?
と母。
憎悪の視線が、蛇に向けられる。
(1986年1月30日執筆)
つづく
この日の1行日記はナシ