1996ベストミステリを語る 05
いろいろ生意気なことを書いちゃってます💦 ホント今読むと恥ずかしい……すみません。
「このミス」雑感(96 12/20)
「というわけで、ことしも『このミステリーがすごい!』が発売されましたです」
「小さい書店でも必ず平積みされてるもんね。こういう本が売れるってことは、ミステリファンがますます増えているんだと考えていいのよね」
「勢いづいて、今年はかなりページ数が増えていたしね」
「ってわけで今日は『このミス』を読んでの感想を、思いつくまま話しましょうか?」
「あいあいさー。でも海外モノはまったくわからないから、ここでは無視しちゃうよ」
「了解、了解。じゃ、ランキングから見てみる? ベスト10は前に話したとおりね。あたし、このランキングには結構納得してるの。ま、もちろん、未読の本も何冊かあるんだけど、友達の感想とか世間の評価とかも考慮に入れると、こんな感じかなって」
「11位以下はどう?」
「驚いたのは12位にランクインした『星降り山荘の殺人』。まさかこんな高位置にくるとは思わなかったわ」
「うん、確かにトリックは面白いんだけれども、もしこのトリックがなかったら……つまりXXXがすべて省かれて書かれていたとしたら、あとにはなんにも残らないよ。ラストでは驚くけれど、読んでいる途中は苦痛で仕方がなかったもん」
「XXーXモノにするつもりだと読者に思わせる伏線は、なかなかやるじゃんと思ったけどね。……ランク外の作品で、なにか言いたいことはある?」
「『赤い密室』が入ってきているけど、これって審査の対象になるのか?」
「『日本探偵小説全集』にも幾つか票が入っていたわね」
「そうやって考えると、今年はいろいろと昔の作品が復活してるよね。仁木悦子とか山田風太郎とか双葉文庫の日本推理作家協会賞受賞作全集とか」
「うんうん……嬉しいんだけど、そうやって次々に出版されると、未読ばかりが増えるのよねぇ」
「プーなのに、金ばかりが飛んでいく……。話を元へ戻して……『パズル崩壊』はもっと上位にくるかなぁと思ったけど、駄目だったね。それから、今年は綾辻さん、まったくランクインしてないんだな。『フリークス』、面白いと思ったんだけど」
「どちらも短編集だから、やっぱり弱かったのかしら?」
「『すべてがFになる』ももっと上位にくると思ったけど、いまひとつだったみたい。『コズミック』の方が点数高いし(笑)」
「個人のアンケートを見て、なにか思ったことはある?」
「関西学院大学推理小説同好会OB会のアンケート。4位に『カイジ』を選んでるんだよね」
「立った! ペーター、見て。クララが立った!」
「『ハイジ』じゃなくて『カイジ』ね」
「あら、失礼」
「小説じゃなくて漫画なんだけどね。日記にも何度か書いているんだけど、これは絶対お薦めっすよ。ギャンブル漫画なんだけど、本格の好きな方は読んでみてください」
「他になにか『おお!』と唸ったところはあった?」
「座談会。巻末の対談にも書かれているけど、昔と比べるとずいぶん毒が薄くなったよね。ま、それはさておき、北村薫さんの解説に技能賞……ってのはなるほどなぁって思っちゃった。言われてみれば、『名探偵の掟』も『笑わない数学者』も北村さんの解説が物語と一体化してるもんね。とくに『笑わない数学者』なんて、北村さんの解説がなかったら、本を投げていたかもしれないし……」
「さすが高校教師といったところかしら」
「うん。……それから今年のサントリー・ミステリー大賞の評価も、僕の意見とまったく同じで、思わず笑ってしまった」
「そうそう、『私の隠し玉』コーナーも興味深かったわね。北村さんの『ターン』とかすごく楽しみだわ」
「――ノリリン。本当に新作は出るんだろうなぁ?」
「というわけで、また次回」
解説
~星降り山荘の殺人~
「星降り山荘の殺人」(倉知淳*講談社ノベルス)
閉ざされた雪の山荘で起こる殺人事件。果たして犯人は? 純粋本格推理。
~赤い密室~
「赤い密室」(鮎川哲也*出版芸術社)
鮎川さんの過去の作品を集めた傑作集。「青い密室」と同時刊行。京極夏彦の装丁も話題となった。
~日本探偵小説全集~
「日本探偵小説全集」東京創元社
~パズル崩壊~
「パズル崩壊」(法月綸太郎*集英社)
探偵・法月綸太郎の登場しない短編集。作品の並び方が面白い。
~フリークス~
「フリークス」(綾辻行人*光文社カッパノベルズ)
狂気を描いた連作中編集。
~すべてがFになる~
「すべてがFになる」(森博嗣*講談社ノベルス)
メフィスト賞第1回受賞作。孤島の研究所で起きた密室殺人事件を描く。
~コズミック~
「コズミック」(清涼院流水*講談社ノベルス)
メフィスト賞第2回受賞作。とにかくとんでもないの一言に尽きる。僕はそれほど嫌いではない。
~カイジ~
「カイジ」(福本伸行*講談社)
今、一番気に入っている漫画。じゃんけんをここまで論理的なゲームにしてしまうとはすごい。
~笑わない数学者~
「笑わない数学者」(森博嗣*講談社ノベルス)
シリーズ3作目。消えたオリオン像と密室殺人の謎を解く。大抵の人は事件が起こった時点で謎が解けてしまうというすごい作品。
~今年のサントリー・ミステリー大賞~
「八月の獲物」(森純*文藝春秋)
10億円差し上げますという新聞広告から始まるスケールのでかい物語。ちなみに読者賞は「火の壁」(伊野上裕伸*文藝春秋)。
~ターン~
北村薫の時間をテーマにした3部作の第2作。現在執筆中とのこと。ちなみに第1作は今年TVドラマにもなった「スキップ」(新潮社)。本当は「ターン」が先に書かれるはずだったが、「リプレイ」(ケン・グリムウッド*新潮文庫)の出版により順番が入れ替わったそうだ。