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MAD LIFE 080

6.女の勇気に拍手!(6)

1(承前)

 星の美しい夜だった。
 あたりを見回し、人がいないことを確認すると、瞳は隣の倉庫へ向かった。
 由利子さんを助けなくては。
 彼女はおそらくそこに幽閉されているはずだ。
 足音を立てぬように注意しながら移動する。
 鼓動が激しい。
 汗が止まらない。
「あ……」
 瞳は声を漏らした。
 隣の倉庫にの扉には、南京錠がかけられていた。
 力任せに引っ張ってみたが、びくともしない。
 ……どうしよう?
 瞳は考えた。
 窓から侵入しようか?
 いや、確か真ん中の倉庫には窓がなかったずだ。
 じゃあ、どうする?
 彼女は扉の前を離れると、先ほどまで自分が監禁されていた右端の倉庫に近づいた。
 大木のそばから、割れた窓を見上げる。
 窓に触れると、防犯装置が作動してベルが鳴り響くようになっているのだろう。
 ベルが鳴れば、長崎たちはまたここへやってくる。
 その隙をついて、白い小屋――彼らのアジトに忍びこむというのはどうだろう?
 おそらくアジトには、倉庫の南京錠をはずす鍵があるはずだ。
 もちろん、そう簡単に事が運ぶとは思っていない。
 防犯ベルが鳴ったとき、全員がここへやってくるとは限らないし、南京錠の鍵だってすぐに見つけることは難しいかもしれない。
 でも、やるしかなかった。
 瞳は腰を屈め、地面から手頃な大きさの石を拾った。
 これ以上、おじさんたちに迷惑をかけたくないから。
 肩を回し、窓に向かって石を放り投げる。
 石は窓枠にぶつかり、防犯ベルがけたたましい音を鳴らし始めた。
 それを合図に、小屋へと走り出す。
「またか!」
 長崎の声がした。
 茂みの中へ入り、身体を伏せる。

(1985年10月31日執筆)

つづく

1行日記
今日から修学旅行! 行ってきまーす。


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