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MAD LIFE 265

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(9)

1(承前)

「だから俺はあのとき、『これ以上、〈フェザータッチオペレーション〉について調べるのはやめろ』と君たちに忠告したんだ。真実を知れば、瞳君は苦しむことになるからな」
 瞳は唇を一文字に結び、黙り込んだままだ。
「それからあとのことは、君たちも知っているだろう?」
 中部はさらに続けた。
「我々は立澤組に麻薬を卸していた須藤仁に目をつけ、まず彼を逮捕した。どこから麻薬を仕入れていたのか、須藤はすぐに白状したよ。フリーカメラマンとして海外を飛び回っている熊澤という男からだった。我々は『麻薬を買いたい』と熊澤に連絡を取り、彼がのこのこと現れたところを捕まえたんだ」
 中部はそこでいったん言葉を切ると、瞳のほうをちらりと見た。
「残るは立澤組だ。我々はM――浩次と連絡を取り、大阪駅で取り引きをすることとなった。浩次は我々のことをまったく疑っていなかったみたいだな。浩次を捕まえて……これでなにもかも解決だ」
 中部の話が終わる。
 それ以上、口を開こうとする者は誰もいなかった。

 間瀬浩次は警察の車に揺られながら、八月三十一日夜の出来事を思い出していた。

「待っていたよ」
 俺は長崎の姿を見つけると、すぐさま彼に銃を向けた。
 長崎は立澤組に侵入し、なにやらこそこそと調べ回っていた。
 生かしておくべきではない。
 それに……こいつは長年、俺を苦しめ続けてきた男だ。
 許さない。
 引き金に指をかける。
「待て!」
 慌てふためく長崎の顔。
「おまえ、正気か?」
「ああ。少なくともおまえよりは冷静だ」
 俺はそう答えた。
「待て! その物騒なものをしまってくれ!」
「なぜ? こいつは俺にとって邪魔なものを排除してくれる素晴らしいアイテムだ」
「お、おい。やめてくれ」

 (1986年5月4日執筆)

つづく

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