見出し画像

MAD LIFE 075

6.女の勇気に拍手!(1)

 風の音で瞳は目を覚ました。
 あたりは真っ暗でなにも見えない。
 おそらく夜なのだろう。
 ……ここはどこ?
 瞳は記憶を探った。
 アパートを訪ねてきた由利子と口論をしているとき、小池が部屋に押し入ってきたことを思い出す。
 いきなり口を押さえられ、鼻の奥がつんと痛くなったと思ったら、そのまま気を失ってしまったのだった。
 ……そうか。
 一度忍びこんだことのある林の中の倉庫を思い出す。
 ここはたぶん、長崎のアジトなのだ。
 どうやら、私は捕らえられてしまったらしい。
 由利子さんは無事なのだろうか?
 身体を動かすと、手首に痛みが走った。
 ロープかなにかで縛られているようだ。
 気を失ってから、何時間くらい経ったのだろう?
 私が眠っている間に、なにかとてつもないことが起こっているのでは……。
 そんな不安が脳裏をよぎる。
 足首に絡みついたロープは両脚に力をこめると、すぐにほどくことができた。
 しかし、手首のほうの拘束はまるで緩む気配がない。
 早くここから脱出しなくては。
 瞳はかすかに月明かりが漏れている小さな窓に目をやった。
 窓にガラスは入っていない。
 三日前、瞳が割った窓に間違いなかった。
 ……そうだ!
 名案を思いつく。

 (1985年10月26日執筆)

つづく

1行日記
あさっては月食……晴れろ!


いいなと思ったら応援しよう!