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MAD LIFE 324

22.歯車は壊れた(5)

3(承前)

 私たちはある理由から――たとえどのような理由があろうとも、決して許されることではないのですが――娘の面倒を見ることができなくなってしまいました。
 この手紙を読んでくださっているあなたが、娘を可愛がってくださる心の優しいかたであることを、ただただ祈るばかりです。
 どうかこの娘を幸せにしてやってください。
 よろしくお願いいたします。

 瞳は便箋に目を通したあと、金庫の一番奥にあった青いペンダントをつかみ、手のひらに載せた。
 窓から射し込む太陽の光を反射して、それはきらきらと輝いている。
 私の本当の両親……
 もう一度、便箋に視線を落とし、小さく息を吐く。
 浩次や立澤栄と血の繫がりがなかったことに、安堵したのかもしれない。
 私の身体には狂った血など流れていなかったのだ。
 ……狂った血?
 瞳は自分に問いかけた。
 私はお兄さんのことを狂人だと思ってるの?
 そうだ。
 私はもうあの人を兄だとは感じていない。
 狂人。
 犯罪者。
 殺人鬼。
 どうして……あの人は私を撃とうとしたんだろう?
 殺人鬼だから、殺すことに意味なんてなかった?
 それとも私を憎んでいたのか?
 私を捨てた本当の両親……彼らはなぜ、生まれたばかりの私を手放したのだろう?
 彼らもまた私を憎んでいたのだろうか?

 (1986年7月2日執筆)

つづく

1行日記
実は今日から期末テストだったりする。


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