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MAD LIFE 323

22.歯車は壊れた(4)

 瞳。
 私は今、こうして筆を取りながらもまだ悩んでいる。
 この事実はできることなら、永遠に伏せておきたかった。
 でも、きっといつかばれてしまうに違いない。
 だったら、私から伝えたいと思った。
 単刀直入にいおう。
 瞳、おまえは私たちの本当の娘ではない。
 お母さんの体内から取り出された赤ん坊は息をしていなかった。
 死産だったのだ。
 私たちのショックは大きかった。
 その翌日、私は駅のコインロッカーに捨てられた赤ん坊を拾った。
 丸々と太った可愛らしい女の子。
 それがおまえだ。
 不幸な私たちに神様がくださった贈りもの。
 私たちはなんら迷うことなく、その赤ん坊を自分の娘として育てることを決めた。
 赤ん坊の傍らには便箋とペンダントが置かれていた。
 それらはこの手紙と一緒にしまってある。
 おまえの本当の両親からのメッセージだ。
 ……瞳、驚いたかい?
 でも、これだけはちゃんと知っておいてほしい。
 おまえは私たちの娘だ。
 この事実を知ったからといって、私たちの関係が変わることはない。
 未来永劫、絶対に。

 瞳はその手紙を何度も読み返したあと、金庫の奥に入っていたもう一通の手紙を取り出した。
 それはかなり色あせたもので、父の手紙とは違い、慌てて書いたような感じになっていた。

 (1986年7月1日執筆)

つづく

1行日記
昨日、部活中に足をつっちゃったあ~!


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