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MAD LIFE 087

6.女の勇気に拍手!(13)

3(承前)

「西龍組の奴らは、俺たちの仕業だと思うだろうな」
 立澤は窓の外の夜景を見ながらいった。
「おそらくそうでしょうね。そんなことはしていないのに」
「いや、否定もできねえだろう。もしかしたら、俺の部下が独断で行動して末木を殺したのかもしれねえしな」
「あり得ますね。末木はこの組を裏切った男ですから」
「ああ……」
 窓にかかるカーテンを閉じたあと、立澤は深いため息をついた。
「真実はどうであれ、これから厄介なことになりそうだな……」

「……今、何時かわかりますか?」
 瞳が由利子に尋ねる。
「さあ? 時計は持っていないから」
 由利子は首を横に振って答えた。
 扉から光は漏れてこない。
 少なくともまだ朝にはなっていないはずだ。
 こうしている間にも、洋樹たちは長崎の罠にはまって大変な目に遭っているかもしれない。
 そう思うと居ても立ってもいられなかった。
 早くここから逃げ出さなければ。
 倉庫の壁に力なくもたれかかっていた瞳は、勢いよく立ち上がった。
 鈍い音が響き、目の前に火花が散る。
 なにかに頭をぶつけたらしい。
 瞳は壁を探った。
 冷たい金属の感触。
 壁から突き出たものがある。
 それは丸みを帯びていた。
「ドアノブだ!」
 瞳は叫んだ。
「え? ノブ?」
「ここにドアがある!」
 瞳の声は喜びにあふれていた。

 (1985年11月7日執筆)

つづく

1行日記
本日の古典は自習でした! やったね! 明日、数学の小テスト……。

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