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MAD LIFE 259
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(3)
1(承前)
「……麻薬撲滅の秘密組織?」
洋樹はしゃっくりに似た声をあげた。
「でたらめをいうな。西龍組の組長も組織の一員だったじゃないか」
「西龍統治は麻薬をひどく憎んでいる。警察に協力してでも、麻薬を撲滅させたいと思っていたんだよ」
「まさか……ヤクザなのに?」
「あいつは一本スジの通った男だからな」
「…………」
中部の言葉はまんざら嘘ではないと感じた。
一週間前、立澤組と西龍組の抗争が起こったときの西龍統治の態度を思い出す。
末木力を殺した犯人が立澤組にはいないと知ったとき、彼はすんなりと銃を引っ込めた。
西蔵続治はそんな男なのだ。
「長崎も、彼の部下である小池も、立澤組がどんな卑劣な仕事をやっているか教えてやったら、〈フェザータッチオペレーション〉への協力を約束してくれたんだ」
「あの長崎が――」
洋樹はそこまで口にすると、言葉を止めた。
「親父……」
洋樹の傍らで晃が男泣きを始める。
「おい、長崎」
遡ること一週間前。
警察に逮捕された長崎典和に、中部は話を持ちかけた。
「おまえ、昔は立澤組にいたんだったよな?」
「ああ、そうだ」
中部に手渡された煙草を美味そうに吸いながら長崎が答える。
「なぜ立澤組を辞めたんだ?」
「辞めたんじゃない。追い出されたんだ。俺の娘が組長をナイフで刺してね……たいした傷ではなかったが、その事件がきっかけで、俺は組から追放された」
彼は吐き捨てるようにいった。
「立澤組なんて糞くらえだ!」
(1986年4月28日執筆)
つづく
この日の1行日記はナシ