劇場版「名探偵コナン」雑感 01
時計じかけの摩天楼(1997年公開作品)
◎こんな感動は久しぶりだぁぁぁぁ!
(97/4/28の日記より抜粋(一部書き改めてます))
え? なにに感動したって? コナンっすよ。コナン。未来少年コナンじゃないっすよ。今、子供に大人気の「名探偵コナン」であります。
今日、ついに、恥ずかしさを忍んで映画館へ足を運んだんですよ。もちろん、「名探偵コナン~時計じかけの摩天楼」を見るために。平日なら、人もあんまりいないから、こっそり見ることができるだろうと思っていたんです。……確かに人は少なかった。でも僕以外、全員、小学生だぁ(一人、子供を連れてやってきたおじさんがいたけど)。いやぁ、恥ずかしかった。「早く映画よ、始まってくれぇぇぇ」と叫びながら、ずっとうつむいてました(苦笑)。……あれ? 今、ふと思ったんだけど、今日は平日なのに、どーして小学生がいたんだろう?
ま、そんなことはおいといて……。
映画のほうは……正直、大して期待はしていなかったんすよ。原作にはないオリジナル作品だってことだったし(TVではアニメオリジナル作品の出来はいつもイマイチだったんです)、ま、「東映マンガ祭り」とか、ああゆーノリで作った作品だろうなぁ程度に考えていたんです。
でもそれは間違っていました……。
私、声を大にしていいます。
これはいい!
マジで傑作です。大袈裟ではなく、私のここ数年間で見た映画の中では(ほとんど洋画ね)、間違いなくベスト1です。
ああ、そこそこ。あきれないように。「なんで子供向けのアニメがベスト1なんだよぉ」と思うかもしれませんが、甘ぁぁぁい! もし、これが実写だったら、「ダイハード」か「スピード」かってくらいの大アクションドラマですぞ(ちょっといいすぎ?)。そこに本格推理の要素を混ぜ合わせながらの展開。そして……クライマックス!
いやぁ、不覚にも泣いてしまいました。
私、いわせてもらいます。
この映画を見て、損はありません!!
コナンをまったく知らない方でも大丈夫。「エヴァンゲリオン」みたいに、予備知識がないとさっぱりわからないという映画ではありません(知識があったほうがより楽しめるとは思うけど)。
ああ、今日はホントにいい一日だった。
しかし28にもなって、小学生に混じってアニメを見ようとは……(いっておきますが、私、アニメおたくではありません。中学生以降、アニメにはほとんど興味なかったんですから)。
……映画が終わり、涙を拭いながら席を立つと、後ろに座っていた小学生が冷めた声で一言。
「あぁあ、眠かったぁぁ」
ば、馬鹿野郎! おめーにはこの感動のドラマがわからないのかぁぁぁ!(激怒)
PS 私、別に制作サイドの回し者ではありませんので(笑)。
◎で、あらためて映画の感想
いやぁ、日記からの抜粋を見て、おわかりのとおり、私、興奮してますなぁ(苦笑)。でも上記で書いた感想は、今でもまったく変わっておりません。この映画、マジで傑作なんです。
で、この興奮をあなたにも味わってほしいんで、できればここから先は、映画を観た人だけに目を通してもらいたいです。先入観なしで、観てもらったほうが、何倍も興奮できると思うんで……。
では感想。
まず、「推理ドラマ」としての観点で見てみると……。
今回の映画は、ひとつの謎を追いかけていくという形ではなく、小さい謎、大きい謎、様々な事件が入り乱れ、それらを解決しながら、徐々にメインの謎に迫っていくという形を取っています。
まず、メインの謎とは直接関係ない部分で、TV用の一本としても使えるであろうアイデアが惜しげもなく2本、挿入されていますよね。冒頭の事件と過去の事件。どちらも小粒ながら、うまくまとまっております。
ただ……工藤少年が関わった最大の事件(確か、そういういい方をしていたよね?)があの程度っていうのはちょっと……。
ってことは大きな事件に関わるようになったのはコナンになってからってことになっちゃいますよね。コナンの解決した事件のほうがよっぽどスケールでかいもん。
メインの事件では、やはり「列車爆破事件」が迫力ありましたな。明らかに「スピード」もどきなんですが、犯人の指示からヒントを得て、爆弾のありかを推理するシーンなんかは、さすがコナンって感じです。ただあれだけの根拠から、そう断定してしまうってのは危険だったと思うんだけど……(もし、推理が間違っていたら、どうするつもりだったんだ?)
ちなみに、列車爆破事件に至るまでの爆弾ゲーム(模型飛行機爆破事件やペットハウス爆破事件)は、いかにも「ダイ・ハード3」って感じ。
そしてメインの謎解き。――僕があまり好きではない「犯人を罠にかけるパターン」ではあったものの、無理なく上手に決まっていましたね。ミスリーディングとして用意されていた刑事も、見事に決まった!! ……ってわけではありませんでしたが、ま、それなりに、騙されてしまいましたし。
ってわけで、推理ドラマとして見る限りでは、見応えはあったけれども、決してそれ以上のものでもなかったんですよね。
ではなぜ傑作だ、傑作だと騒ぎ立てるかというと……これはもう、ただただ「新一と蘭のドラマ」に尽きるんですよ。思いっきり伏線が張られていたにも関わらず、僕、蘭の最後の一言を予測することができなかったんです。
まさに「やられた!」って感じでした。見事なトリックを見せつけられたときとまったく同じ状態でした。
◎ラストシーンについて
(以下、重大なネタバレがあります。未鑑賞のかたはご注意ください)
爆弾事件がメインの話だってことはわかっていたので、物語の冒頭、蘭が新一へのプレゼントを「赤がいい? 青がいい?」って尋ねた時点で、これが最後に導火線を切るときの選択理由になるんだなってことはわかったんです(爆弾の関係する物語では定番ですからね)。赤がラッキーカラーであるとか、新一は赤が好きだとか、ことあるごとに強調していましたし。
だからね、僕、ラストでは青の導線を切るんだって思ったんですよ(ラッキーカラーが赤なら、青を切って、赤を残すんじゃないかな? だって赤を切ったら、ラッキーカラーを断ち切るみたいで不吉じゃないっすか。たぶん、僕が同じ状況に陥ったら、迷わず赤を残すだろうなって思ったんだけど)。
そんなわけで、ラスト、新一(コナン)が「蘭は赤を切るに違いない」と判断を下したことにはちょっとした違和感を覚えるんですよね。僕が異常なのかな? こーゆー場合、普通は赤を切るものなんでしょーか?
で結局、蘭は青の導線を切ったわけですが、ここに至って、「あ、きっと、蘭は僕と同じ考え方をしたんだろうな」って、ただ単純に思ったんですよ。
しかしそこに「赤い糸の伝説」が関係していたとは!!!
すぐ目の前に、こんな大きな伏線が転がっていたのに、それに気づかなかったとは!!
まさに、してやられたって感じでしたね。
で、このとき、「うわぁ、してやられた!」と思ったからこそ、なおさら、新一が(犯人も)「蘭は赤を切る」と思いこんでいた理由が希薄で、残念なんですよね。あの状況なら、絶対に蘭が赤を切っていたというエピソードがどこかに挿入されていたら、もう文句なしに満点だったんですが(たとえば、過去に似たような事件(爆破事件じゃなくてもいいけど)があって、そのときにはラッキーカラーを切断することによって命が救われた――そういう話を蘭、新一(コナン)、犯人の3人が聞いていたとかね)。
それとも(しつこいけど)、普通、こういう状況では赤を切るものなのかな?
謎がすべて解明されたとき、「ああ、なんで俺はこんなにもあからさまに示された手がかりに気づかなかったのだろう!」って読者が地団駄を踏む小説が、良質の本格ミステリだと僕は考えているんで、そういう意味では、今回のコナンは最高のミステリ作品です。ただあまりにも手がかりがあからさますぎて、勘のいい人は「赤い糸の伝説」の意味に気づいてしまったかもしれませんね。その辺で、この作品の評価が分かれるかも。
ああ、愚鈍な僕で本当によかった。
(1997 5/6)