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MAD LIFE 077
6.女の勇気に拍手!(3)
1(承前)
倉庫の外から数人の足音が聞こえた。
「どうした一体?」
長崎の声が耳に届く。
瞳は防犯ベルの鳴り響く中、彼らの会話を聞き取ろうと耳を澄ました。
「まさか、春日と中西が戻ってきたんじゃねえだろうな」
「それはないでしょう。今頃、ふたりは警察で取り調べをうけているはずですから」
警察で取り調べ?
やはり、なにかあったんだ。
瞳は胸を押さえた。
「おい。うるさくてかなわねえな。ベルを止めろ、黒川」
「はい」
しばらくすると、けたたましい音は聞こえなくなった。
「誰かが侵入した形跡はありませんね」
「きっと、間抜けな鳥が窓にぶつかったんだろう」
長崎はいった。
「しかし、あいつら……こうもやすやすと俺たちの罠にはまってくれるとはな。おい黒川、あいつらに感謝しとけよ」
「はい……」
「なんだ? 浮かねえ顔をしてるな」
「あいつら……長崎さんに人殺しを頼まれたことを警察にしゃべったりしないでしょうか?」
「それほどの馬鹿じゃねえだろ。こっちには人質がふたりもいるんだからな。それに警察にすべてをばらしたら、間瀬の犯行だって発覚しちまう」
瞳はびくんと身体を痙攣させた。
兄の犯した罪。
そのせいで私たちは苦しみ続けているのだ。
「しかし、おまえも思いきったことをやったもんだな」
長崎がいう。
「末木を殺しちまうなんて」
「つい、かっとなってしまって。気がついたら、護身用にいつも持っていたナイフで、あいつを刺し殺していました」
「後先のことは考えなかったのか?」
「すみません。末木の奴……長崎さんへの恩をすっかり忘れちまっているもんだから、頭に血が上って……」
「まあいいさ」
長崎は笑いながらいった。
「末木殺しの犯人は誰がどう見たって、春日と中西なんだからな」
彼の言葉に、瞳は息を呑んだ。
(1985年10月28日執筆)
つづく
1行日記
今夜は月食! お願い、晴れて!