逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本12
燃え盛る逆転(12)
《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
X鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手、大学構内で遺体が発見される
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手、深夜3時にボヤを見つけて消火活動
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長
▼シーン12
30分後。御剣の携帯電話が鳴り響く。発信者は糸鋸。
〈糸鋸〉『御剣検事、見つけたッス! 大地選手のロッカーから怪しげな錠剤とアンプルが! これで決まりッス! ドーピングの事実が鞍馬選手にばれたから、口封じのために殺したッスね! とんでもない話ッス! 大地選手を見つけ次第、逮捕するッス』
〈御剣〉[驚いた様子で](なんだって? あまりにも出来すぎではないか?)[糸鋸に向かって]「待て、刑事」
〈糸鋸〉「なんッス? 自分に手柄を立てられるのがイヤなんスか? いくら御剣検事の命令といえど、今回ばかりは聞けないッス!」
電話、一方的に切れる。
〈御剣〉「……愚か者が」
とそのとき、サイレンの音があたりに響き渡る。周囲を見回すと、記念館の方角が明るい。
〈御剣〉「まさか」
記念館へと駆けつける御剣。建物が激しく燃えている。すでに放水が始まっているが、火の勢いはおさまらない。
〈目樽〉[泣き崩れて]「ああ……この大学の輝かしい歴史が……私の大切なコレクションが……」
そこへ大地が現れる。
〈大地〉「……こりゃひどい」
さらに、息を切らせながら糸鋸登場。
〈糸鋸〉「ああ、大地翔! 見つけたッス! 放火および殺人の罪で逮捕するッス!」
〈大地〉「え? どういうこと?」
大地に飛びかかる糸鋸。手錠をはめ、勝ち誇った笑みを浮かべる。
〈糸鋸〉「捕まえたッス! 糸鋸圭介、これより犯人を警察に連行するッス」
〈大地〉「ちょっと待ってくれ! なにかの間違いだ! オレは誰も殺してないよ!」
抵抗する大地。
御剣は燃え盛る記念館をじっと見つめたまま、なにやら思案に暮れている。
目の前に伸びるホース。放水の現場をじっと見つめる御剣。
〈御剣〉「なるほど、そういうことか」
ほくそ笑む御剣。そんな彼の姿を呆然と眺める糸鋸。
つづく
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