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MAD LIFE 270

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(14)

3(承前)

「今日をもって〈フェザータッチオペレーション〉は解散する」
 グラスを手にした中部がそう宣言する。
 五つの手が四方から伸び、活気ある「乾杯!」の声があたりに響き渡った。
 グラス同士の重なり合う音が耳に心地よく飛びこんでくる。
 誰もが幸せそうな笑みを浮かべていた。
「警部、今まで協力をありがとう」
 中部は金井に右手を差し出していった。
「こちらもお役に立てて嬉しいよ」
 金井が目尻にしわを寄せながら答える。
「僕もひさしぶりに現役に戻れたみたいで楽しかった」
 そう口にしたのは志村だ。
「立澤組は壊滅。これからは西龍組の天下だな」
 西龍は豪快に笑うと、グラスの中身を一気に飲み干した。
「おいおい」
 中部が肩をすくめる。
「あまり、派手なことはやらかすなよ」
「さあ、どうだか?」
「〈フェザータッチオペレーション〉が解散しても、俺たちの監視の目は四六時中光っている。ちょっとでもおかしなことをやらかしてみろ。すぐに逮捕だからな」
「あんたはどんなやくざよりもおっかねえな」
 西龍の言葉に、みんなが大声で笑う。
 笑いながら小池は天井を仰いだ。
 なにもない空間に向かって小さく呟く。
 長崎さん……かたきは討ちましたよ。

 (1986年5月9日執筆)

つづく

1行日記
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