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旅の終わり~事後測定最終日

2006年8月23日(水)

ほぼ1ヵ月に渡って行なわれた宇宙実験も、今日ですべて終了。
出所の日がやって来ました。

本日の測定はほんのわずかだったので、とくにやることもなく、朝からぼんやり。
テレビをぼおっと眺めたあと、時計に目をやると、「あれ? まだ8時?」
雑誌をぱらぱらとめくったあと、時計に目をやると、「あれ? まだ8時半?」
病院内をぶらぶら散歩したあと、時計に目をやると、「ええ? まだ9時なの?」
時間が流れるのが遅い、遅い。
ベッドレスト中は「退屈だ」と感じたことなど一度もなかったのに、今日は暇で暇で仕方がありません。
寝ているときと、立っているときとでは、時間の流れ方が違うんでしょーか?

「退屈だあ、退屈だあ」とぼやいていたら、CBCテレビのかたが再び取材に来られて、簡単なインタビューを受けちゃいました。
その取材がなかったら、あまりの退屈さに、溶けてバターになっていたかもしれません(意味不明)。
どうやら、今日の夕方に放送された模様。
「くろけん、痩せた?」と連絡が入りましたから。
はい。痩せました♪
このまま、スリムになってやる。

テレビ局の皆さんが帰ってしまうと、再び退屈な時間が。
ってなわけで、午後からはケアスタッフの手伝いをひたすら。いや、単に邪魔してだだけかもしれませんが。
視線を感じて顔を上げると、ケアスタッフの一人がじっと僕の顔を見つめています。な、なに? もしかして惚れた?

「黒田さん……老けましたね」

がああああああああっ。

「寝ているときのほうがダンディーでした」

……ううう。
ベッドレスト中は、顔がむくんで肌が艶やかだったんでしょうね。それが立ち上がって血液が下に戻り、逆にげっそりとした表情になってしまったみたいです。あと何日か経つと、げっそり感もなくなってベッドレスト前の状態に戻るらしいですが。
寝ているときは、「ええ? 37歳なんですか? とてもそんなふうに見えません」「学生だと思ってました」といわれていたのに、立ち上がってからは、「年相応になりましたね」「顔がオジサンになってますよ」「お爺ちゃん、腰が痛いんですか?」とすっかり年寄り扱い。
チクショー。

一生、寝て過ごしてやろうか。

そうすれば、きっと永遠の若さが手に入るのね(ぽわわわ〜ん)。

午後7時半に、最後の測定が終了。
すべてが終わったところで、「お疲れ様!」とみんなに拍手をしてもらいました。
そのあと、一緒に出所するKさんの誕生日がまもなくということで、プチ・バースデイパーティを開催。

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食事制限の呪縛から逃れ、口にするケーキ。
うめええええええ。
まだ制限中の皆さんには目の毒だったでしょうけど(申し訳ありません)。

午後8時。
みんなに見送られて、愛知医科大学病院をあとにしました。
……やっぱり寂しかったですね。
皆さん、1ヵ月近くの間、本当にどうもありがとうございました。
つらいこともたくさんありましたが、これまでの人生でもっとも心に残るサイコーのひと夏でしたよ。
この実験に参加してよかった! と、今は幸せを噛みしめております。
え? また参加したいかって?

…………。

…………。

…………。

こーゆー貴重な体験を独り占めするのはちょっと……。
できるだけ多くの人に同じ気持ちを味わってほしいので、僕は遠慮しておきます(焦)。
あ、でも、スタッフとして参加するならいいかも。
次回の実験では、僕が遠心機を回しましょうか?(笑)


▼当時のコメント

iwase

黒田さん,1か月近く,被験者ありがとうございました.貴重なデータが得られました.来年もやる予定です.ホントに実験車としてお手伝い頂けるなら,是非,お願いします.
くろけん

>iwase先生
雑用係でかまいませんので、ぜひ手伝わせてほしいです。今度は、外側から被験者のかたたちを眺めてみたいので……。
よろしくお願いします。

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